赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「イザベラ、具合は?」
「……大袈裟ですわ、陛下」
碌に飲み込んでもいないのに、と苦笑する。
私の目の前に座るセルヴィス様はもう平民の装いなどしておらず、険しい表情を浮かべた私の知っているいつもの皇帝陛下だった。
「調べさせた。アレは"スイセン"というのだな」
「ええ、時期になれば綺麗な花を咲かせますよ」
そして、その植物には毒がある。
「はじめは、港町である特性からテトロドトキシン系の毒ではないかと思っていたのです」
テトロドトキシンとは自然界に存在する神経毒。特定の魚に蓄積され、毒素を取り除かずに摂取することで中毒症状を引き起こし、呼吸困難により死亡することもある。
でも、カルディアではその危険性が十分認知されており、適切な処理がされていた。
「これだけ交易が盛んなら、帝国に"スイセン"が持ち込まれている可能性を考えておくべきでしたね」
スイセンにはアルカロイドという毒があり、食せば中毒症状を引き起こす。
スイセンの葉は帝国でよく食される野菜に酷似している。花が咲いていなければ見分けるのは難しいだろう。
それぞれ単体なら匂いで気づくこともできるけれど、混ぜられてしまえそれさえ難しい。
そしてこの植物は少し前の帝国には存在しなかったので、その危険性の認知度が極めて低いのだ。
「当然、身体の小さな子どもほど毒に侵されやすい。でも、単純にスイセンによる食中毒であれば、男性だけが特異的に高い、という状況はできないはずなのです」
そして、スイセンの毒では幻覚症状は引き起こされない。
別の毒が混ざっている。
スイセンの毒を隠れ蓑にした別の何かが。
「イザベラには心当たりがありそうだな」
「なくはない、ですが。ここから先は私の勝手な妄想です。なので、明確な発言は控えさせて頂きます」
元敵国の王女という立場上、善良な帝国民を疑って人生を終わらせたくはないですしとわざとらしく肩を竦める。
「ヒントは私達の目の前にありました。後は点と点を繋ぐだけ。単純な絵合わせですよ」
私がそう言ったところで面会時間が終わり、女官がセルヴィス様を呼びに来た。
席を立ったセルヴィス様は、
「そういえば、イザベラの提案した経口補水液を導入して以降、症状が緩和した者が多いと報告が上がっている」
と私に現状を教えてくれた。
サーシャ先生の配合に間違いはない。私も何度も助けられたのだから。
「それは、ようございました」
あとはこれ以上、被害者が出ない事を祈るばかりだ。
「ああ、そうだ。陛下、黄色より赤い花の方が人々を魅了するとは思いませんか?」
こちらを振り返ったセルヴィス様と視線が絡む。
私の真意を攫って汲み取ろうとする、紺碧の瞳は、
「なるほど。だが、生憎赤い花は好きじゃなくてな。見舞いには別の……白いダリアでも持ってくるとしよう」
ふっと口角を上げそういうとセルヴィス様は去って行った。
完全に一人になってから私はポスっとベッドに横たわる。
「伝わったようで良かったけども」
白のダリアの花言葉は"感謝"。
「……チョイスが悪い」
絶対わざとだわと私は顔を伏せる。
花言葉はもう一つ。
『豊かな愛情』
私に一番縁遠い。
なのに、心臓が掴まれたように痛いのはきっと、病状が悪化しているからだと自分に言い聞かせた私の元に本当にダリアが届けられたのはもう少し先のお話。
「……大袈裟ですわ、陛下」
碌に飲み込んでもいないのに、と苦笑する。
私の目の前に座るセルヴィス様はもう平民の装いなどしておらず、険しい表情を浮かべた私の知っているいつもの皇帝陛下だった。
「調べさせた。アレは"スイセン"というのだな」
「ええ、時期になれば綺麗な花を咲かせますよ」
そして、その植物には毒がある。
「はじめは、港町である特性からテトロドトキシン系の毒ではないかと思っていたのです」
テトロドトキシンとは自然界に存在する神経毒。特定の魚に蓄積され、毒素を取り除かずに摂取することで中毒症状を引き起こし、呼吸困難により死亡することもある。
でも、カルディアではその危険性が十分認知されており、適切な処理がされていた。
「これだけ交易が盛んなら、帝国に"スイセン"が持ち込まれている可能性を考えておくべきでしたね」
スイセンにはアルカロイドという毒があり、食せば中毒症状を引き起こす。
スイセンの葉は帝国でよく食される野菜に酷似している。花が咲いていなければ見分けるのは難しいだろう。
それぞれ単体なら匂いで気づくこともできるけれど、混ぜられてしまえそれさえ難しい。
そしてこの植物は少し前の帝国には存在しなかったので、その危険性の認知度が極めて低いのだ。
「当然、身体の小さな子どもほど毒に侵されやすい。でも、単純にスイセンによる食中毒であれば、男性だけが特異的に高い、という状況はできないはずなのです」
そして、スイセンの毒では幻覚症状は引き起こされない。
別の毒が混ざっている。
スイセンの毒を隠れ蓑にした別の何かが。
「イザベラには心当たりがありそうだな」
「なくはない、ですが。ここから先は私の勝手な妄想です。なので、明確な発言は控えさせて頂きます」
元敵国の王女という立場上、善良な帝国民を疑って人生を終わらせたくはないですしとわざとらしく肩を竦める。
「ヒントは私達の目の前にありました。後は点と点を繋ぐだけ。単純な絵合わせですよ」
私がそう言ったところで面会時間が終わり、女官がセルヴィス様を呼びに来た。
席を立ったセルヴィス様は、
「そういえば、イザベラの提案した経口補水液を導入して以降、症状が緩和した者が多いと報告が上がっている」
と私に現状を教えてくれた。
サーシャ先生の配合に間違いはない。私も何度も助けられたのだから。
「それは、ようございました」
あとはこれ以上、被害者が出ない事を祈るばかりだ。
「ああ、そうだ。陛下、黄色より赤い花の方が人々を魅了するとは思いませんか?」
こちらを振り返ったセルヴィス様と視線が絡む。
私の真意を攫って汲み取ろうとする、紺碧の瞳は、
「なるほど。だが、生憎赤い花は好きじゃなくてな。見舞いには別の……白いダリアでも持ってくるとしよう」
ふっと口角を上げそういうとセルヴィス様は去って行った。
完全に一人になってから私はポスっとベッドに横たわる。
「伝わったようで良かったけども」
白のダリアの花言葉は"感謝"。
「……チョイスが悪い」
絶対わざとだわと私は顔を伏せる。
花言葉はもう一つ。
『豊かな愛情』
私に一番縁遠い。
なのに、心臓が掴まれたように痛いのはきっと、病状が悪化しているからだと自分に言い聞かせた私の元に本当にダリアが届けられたのはもう少し先のお話。