赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「……ヴィー、ありがとう」
ひとしきり泣いてスッキリした私は、ヴィーの事を撫でる。
「お礼にお花あげる」
そう言って差し出すとヴィーは私の手にあるガーベラを不思議そうに眺める。
「綺麗でしょう。ガーベラっていうのよ」
私は色とりどりのガーベラをヴィーに見せながら、
「ガーベラは本来この時期に育つモノではないんだけど」
図鑑を取り出し説明する。
「あの温室には、秘密があるの」
私はヴィーを撫でながら静かに説明する。
あの温室にはどうやら魔法がかけられているらしかった。
それに私が気づいたのは見つけた古い植物の種を実験的に蒔いた時。
異常に育ちが早かったのだ。そして、育ったその植物は時期ハズレのホオズキ。
ホオズキの根には子宮収縮作用のある成分が含まれている。つまり、堕胎剤が作れるのだ。他にも、避妊薬になる植物もあった。
一度だけ収穫でき、跡形もなく消える不可思議な魔法。
アレはきっと、後宮の妃達の尊厳を守るためのもの。
皇帝陛下の子を亡き者にするのは重罪。とはいえ、今更それを裏付ける証拠などなく、全ては私の妄想の域を出ない。
ならば、語る必要もないだろう。
いつか、誰かがあの温室の魔法に気づいても、過去が暴かれなければいい。
知らない方がいい事も世の中には沢山あるのだから。
私は図鑑の持ち主に敬意を表しながら、この秘密を墓場まで持っていく事に決めた。
「時間を操れるなんて、帝国の魔法はすごいわね」
詳細を伏せて秘密を明かした私は、堕胎剤の代わりに育てたガーベラをヴィーに渡す。
「私、ガーベラが一番好き」
これは希望の花なの、と私はヴィーに説明する。
ガーベラには沢山の花言葉があり、本数によって意味が変わる。
そしてこれはクローゼアでは第一王女であるイザベラの紋章に使われている彼女の花だ。
「そうねぇ。ヴィーには8本、かな」
小さな花冠を編み、私はヴィーの頭に載せる。
「そろそろ寝る時間ね。一緒に寝てくれる?」
おいで、と呼べばヴィーは素直に付いてくる。
「ヴィーにアニマルセラピストの称号をあげたいわ」
朝にはいなくなってしまうヴィー。
繰り返す夜を経て私は気づいた。ヴィーがいるとよく眠れるのだ。
リープ病に侵された身体が痛むことなく、ぐっすりと。
「ずっと、一緒ならいいのになぁ」
おやすみ、とヴィーに身体を寄せつぶやくと急激に睡魔がやってくる。
その夜私が見た夢は、誰かに優しく頭を撫でられる夢だったけど。
目が覚めて現実に戻れば、そんな人は当然いない。
ヴィーが来てくれる夜が待ち遠しい。
そんな事をぼんやり考えながら、私は今日も寵妃を演じるために気怠い身体を起こしたのだった。
ひとしきり泣いてスッキリした私は、ヴィーの事を撫でる。
「お礼にお花あげる」
そう言って差し出すとヴィーは私の手にあるガーベラを不思議そうに眺める。
「綺麗でしょう。ガーベラっていうのよ」
私は色とりどりのガーベラをヴィーに見せながら、
「ガーベラは本来この時期に育つモノではないんだけど」
図鑑を取り出し説明する。
「あの温室には、秘密があるの」
私はヴィーを撫でながら静かに説明する。
あの温室にはどうやら魔法がかけられているらしかった。
それに私が気づいたのは見つけた古い植物の種を実験的に蒔いた時。
異常に育ちが早かったのだ。そして、育ったその植物は時期ハズレのホオズキ。
ホオズキの根には子宮収縮作用のある成分が含まれている。つまり、堕胎剤が作れるのだ。他にも、避妊薬になる植物もあった。
一度だけ収穫でき、跡形もなく消える不可思議な魔法。
アレはきっと、後宮の妃達の尊厳を守るためのもの。
皇帝陛下の子を亡き者にするのは重罪。とはいえ、今更それを裏付ける証拠などなく、全ては私の妄想の域を出ない。
ならば、語る必要もないだろう。
いつか、誰かがあの温室の魔法に気づいても、過去が暴かれなければいい。
知らない方がいい事も世の中には沢山あるのだから。
私は図鑑の持ち主に敬意を表しながら、この秘密を墓場まで持っていく事に決めた。
「時間を操れるなんて、帝国の魔法はすごいわね」
詳細を伏せて秘密を明かした私は、堕胎剤の代わりに育てたガーベラをヴィーに渡す。
「私、ガーベラが一番好き」
これは希望の花なの、と私はヴィーに説明する。
ガーベラには沢山の花言葉があり、本数によって意味が変わる。
そしてこれはクローゼアでは第一王女であるイザベラの紋章に使われている彼女の花だ。
「そうねぇ。ヴィーには8本、かな」
小さな花冠を編み、私はヴィーの頭に載せる。
「そろそろ寝る時間ね。一緒に寝てくれる?」
おいで、と呼べばヴィーは素直に付いてくる。
「ヴィーにアニマルセラピストの称号をあげたいわ」
朝にはいなくなってしまうヴィー。
繰り返す夜を経て私は気づいた。ヴィーがいるとよく眠れるのだ。
リープ病に侵された身体が痛むことなく、ぐっすりと。
「ずっと、一緒ならいいのになぁ」
おやすみ、とヴィーに身体を寄せつぶやくと急激に睡魔がやってくる。
その夜私が見た夢は、誰かに優しく頭を撫でられる夢だったけど。
目が覚めて現実に戻れば、そんな人は当然いない。
ヴィーが来てくれる夜が待ち遠しい。
そんな事をぼんやり考えながら、私は今日も寵妃を演じるために気怠い身体を起こしたのだった。