赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「正直クローゼアの暴君王女なんて、と思っていましたが。とんでもない掘り出し物でしたね」

 そう言ってオスカーが取り出したのはカルディアから送ったネックレスと染め物のショール。

「おかげで敵対する国が早々に絞れました」

 トカゲの尻尾が切り落とされるより早く、とオスカーは報告書を渡す。

「これではっきりいたしました。我が帝国に再び戦火を灯したいと目論む輩がいるようです」

 クローゼア戦は早々に終結しましたからねとオスカーはため息を漏らす。

「戦争は、金になるからな」

 馬鹿げた考えだが、長引く戦争は確かに大きな金が動き一部の人間の懐を潤した。
 沢山の犠牲()と引き換えに。
 オゥルディ帝国はそうして他者を喰い大きくなってきた。
 だが、それは終わりにせねばならない。

管理された戦争(シーソーゲーム)の手引きをしようとしているのは、やはり四家か」

「どこの家か、までは絞れてませんけどね」

 帝国には昔から皇帝を支えてきた四つの名
家がある。
 が、けして一枚岩とは言いがたく、虎視眈々と玉座の掌握を狙っている。

イザベラ(他国の姫)という囮だけでは、炙り出すには時間がかかりそうだな」

 報告書を読みながら、セルヴィスは淡々とした口調で現状をつぶやく。
 重鎮として国を支えてきた名家。皇帝がセルヴィスへと代替わりした今なおその影響力は色濃く国に根付いている。
 故に決定的な証拠がなければ失脚させることは難しい。

「四家の娘全員を後宮入りさせ人質に、という当初の案も悪くなかったと思うんですけどね」

 セルヴィスが反逆を成し遂げ帝位に就いた時点で、その話(正妃選び)が出ることは分かっていた。
 それに乗じて有力者の娘を囲ってしまえば多少なりと抑止力になる。
 だが。

「……後宮は好きじゃない」

 セルヴィスがそれをよしとしなかった。
 これは好き嫌いの問題ではないことくらい、セルヴィスだって理解していた。
 だとしても、どうしてもあの父親と同じ事ができなかった。

「気がかりはミリア妃の事、ですか?」

『ここは、(私達)にとって監獄と変わらないの』

 私達は一生出られない。
 そう言った彼女は、生涯そこから出ることが叶わなかった。
 母親が死に後宮から出され、遠い地の果てで彼女が死んだと聞いた時、どうにもならない喪失感を覚えた。
 もっと早く助け出せたなら。
 自分に力があったなら。
 そもそも、呪い子と言われた自分と関わらなければ。
 彼女はまだ生きていたかもしれない、と。
 どうにもならない過去は未だにセルヴィスを苦しめる。

「ミリアのような人間を、もう出したくない」

 そのために帝位を父親から奪い取った。
 沢山の犠牲を払い、非情だ、化け物だと罵られながら。
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