赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「ここは?」

 連れて行かれたのはとても大きな植物園。
 市場に毒物が紛れ込んでないか調査するのではなかったのか? とセルヴィス様を見れば、

「どこにでも行くって言っただろ?」

 と楽しげな声が落ちてきた。

「それに、一度ここを自分の目で見てみたかった」

 付き合って欲しいと促され、私は腑に落ちないまま頷いたけれど。

「わぁ〜、こんな貴重種まで!!」

 図鑑でしか見た事のない植物の数々を前にそれらの疑問は全て吹き飛んだ。
 サーシャ先生がここにいたらきっと嬉々として植物とその薬効についての講義がはじまりそうだわ、なんて目を輝かせていると。

「ははっ、そんなに喜んでくれるなら連れてきた甲斐があった」

 セルヴィス様が相好を崩して、本当に楽しそうに笑った。
 "皇帝陛下"をしている時のセルヴィス様はほとんど笑わないし、私に正体がバレてから肩の力が抜けたように接してくれるときも静かで綺麗な笑い方だったのに。
 すごく無邪気で、子どもみたいな笑い方。
 これもまた彼の一面なのかもしれない、と新たな発見に嬉しくなった。

「ここには、かつて様々な国を放蕩していたらしい、とある貴族の令嬢が持ち帰った様々な種類の植物が保存されている」

「それはすごいっ!!」

 セルヴィス様の言葉に感嘆の声を上げた私は好奇心がうずき、アレコレ見て周りたい衝動に駆られる。
 浮かれてキョロキョロしたりしないように気をつけていたのに、

「好きに見て回って構わない。リーリィの邪魔をしないように後ろをついて行くから」

 噛み殺した笑みと共に察したようにセルヴィス様が私に自由を与えてくれようとする。

「どうした? リーリィ」

 じっと見返す私に、行かないのか? と不思議そうに尋ねるセルヴィス様。
 いつもこうして私を尊重し、歩み寄ろうとしてくれるセルヴィス様。
 この優しさはきっと偽物()ではなく、イザベラが受け取るべきものだけど。

「後ろ、じゃなくて……一緒に、はお嫌……ですか?」

 視察するなら、分かる範囲で解説しますよとセルヴィス様の袖を引き誘う。
 許されるなら、リーリィである今だけは、同じように彼に歩み寄りたくて。
 少し驚いた表情を浮かべたセルヴィス様は、

「では、同行させてもらおうか」

 せっかくだから色々教えて欲しい、と私の手を取ってそう言った。
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