根暗な貴方は私の光
紬の頭上を一機の爆撃機が横切る。灰色の胴体から爆弾が零れ落ち、その下にあった建物が跡形もなく音と炎を立て爆散する。
爆風が辺り一面を襲い、硝煙の匂いと炎の匂いが鼻を突く。
再び襲い掛かってきた強風に身体の動きを奪われながらも紬は立ち上がった。行かなければならなかった。鏡子の無事を蕗の無事を確認するために視線の先で山積みになった柱の元へと。
「鏡子! 鏡子!」
地面に膝を付いた紬は目の前にある瓦礫に向かって何度もその名を呼ぶ。何度も何度も名前を呼ぶのに、呼ばれた相手は何も答えることはない。
全身を絶望が襲った。視線を辺りに向ければ地面に座り込んで息を荒くする蕗が目に入った。
嗚呼、良かった。生きている、無事に生きている。
一瞬安堵に胸を撫で下ろそうとした紬は蕗の視線の先を無意識の内に追ってしまった。
「鏡子……さん…………?」
蕗の足元の先、燃え上がる柱の隙間から何かが覗いている。赤黒い何か。
それに気がついた時、もう一度耳元で爆発音が鳴り、鏡子が下敷きになった瓦礫の上に再び燃え上がった瓦礫が降り落ちる。
何かを押し潰す鈍い音が耳に届いた。とにかく不快で、現実を知らしめるその音に吐き気を感じる。
紬は思わず口元を手で覆い、目を逸らした。変わらず蕗は燃え上がる柱を呆然と眺めている。
「蕗!」
「五十鈴さん!」
幻聴かと思った。とうとう自分の耳すらおかしくなってしまったのかと絶望が全身を覆う。
けれど、その声は幻聴でも何でもなかった。
視界の端で誰かが屈んだ。誰かに肩を触られ反射的に顔を上げる。
そこにいたのは江波方であった。煤で頬を汚して息が上がっている。ここまで駆けつけてくれたのだろうか。
「何があったんだ」
「きょ、きょう、こ……鏡子が………」
完全にパニックになっていた紬はまともな言葉も発せず江波方へと訴えかけた。
彼が目の前にいることに安心すると同時に、鏡子が犠牲になったことを理解してしまったのだ。江波方がすかさず倒れそうになる紬の身体を抱き留めるが一向に落ち着くことができなかった。
爆風が辺り一面を襲い、硝煙の匂いと炎の匂いが鼻を突く。
再び襲い掛かってきた強風に身体の動きを奪われながらも紬は立ち上がった。行かなければならなかった。鏡子の無事を蕗の無事を確認するために視線の先で山積みになった柱の元へと。
「鏡子! 鏡子!」
地面に膝を付いた紬は目の前にある瓦礫に向かって何度もその名を呼ぶ。何度も何度も名前を呼ぶのに、呼ばれた相手は何も答えることはない。
全身を絶望が襲った。視線を辺りに向ければ地面に座り込んで息を荒くする蕗が目に入った。
嗚呼、良かった。生きている、無事に生きている。
一瞬安堵に胸を撫で下ろそうとした紬は蕗の視線の先を無意識の内に追ってしまった。
「鏡子……さん…………?」
蕗の足元の先、燃え上がる柱の隙間から何かが覗いている。赤黒い何か。
それに気がついた時、もう一度耳元で爆発音が鳴り、鏡子が下敷きになった瓦礫の上に再び燃え上がった瓦礫が降り落ちる。
何かを押し潰す鈍い音が耳に届いた。とにかく不快で、現実を知らしめるその音に吐き気を感じる。
紬は思わず口元を手で覆い、目を逸らした。変わらず蕗は燃え上がる柱を呆然と眺めている。
「蕗!」
「五十鈴さん!」
幻聴かと思った。とうとう自分の耳すらおかしくなってしまったのかと絶望が全身を覆う。
けれど、その声は幻聴でも何でもなかった。
視界の端で誰かが屈んだ。誰かに肩を触られ反射的に顔を上げる。
そこにいたのは江波方であった。煤で頬を汚して息が上がっている。ここまで駆けつけてくれたのだろうか。
「何があったんだ」
「きょ、きょう、こ……鏡子が………」
完全にパニックになっていた紬はまともな言葉も発せず江波方へと訴えかけた。
彼が目の前にいることに安心すると同時に、鏡子が犠牲になったことを理解してしまったのだ。江波方がすかさず倒れそうになる紬の身体を抱き留めるが一向に落ち着くことができなかった。