根暗な貴方は私の光
 それでも愛妹の安全を目視するまで諦めるわけにはいかない。どうにかしてこの現状から抜け出そうと考えを巡らせていると。

「鏡子さん! 紬さん!」

 自分達の名前を呼ぶ少女の声が聞こえた。声が聞こえた方向に目をやるとボロボロになった姿だが生きている蕗がいた。
 鏡子は一歩前に踏み出し蕗に向かって大きく手を振る。何度も彼女の名前を呼びながら存在を知らせるために手を振ると、蕗は安心した表情を浮かべた。
 手を振っていた鏡子もまた安心したように強張らせていた表情を緩める。
 けれど背後でその様子を見ていた紬は決して安心できなかった。

「きゃあああああ!」

 安心したのも束の間、すぐ近くで誰かの叫び声が聞こえたかと思うと激しい爆発音が辺りの空気を震わせた。

 ドカン______。

 連続で辺りに爆発音が木霊する。紬は吹き付けた暴風に足元を救われ、態勢を崩してその場に崩れ落ちた。
 痛みに朦朧としながらも視線を周囲に向ける。周囲には逃げ惑う人々が混沌と渦を成していた。 
 今すぐにでも逃げ出さなければ、爆発に寄って倒壊した建物の下敷きになってしまうかもしれない。
 隣りに立っているであろう鏡子にそう促そうと視線を上に向けると、そこにいるはずの鏡子の姿が何処にもなかった。

「蕗ちゃん!」

 視線の先には倒壊した建物から弾き出された燃え上がる柱がある。そしてそのすぐ下には呆然と柱を見上げる蕗の姿があった。
 全身から血の気が引いていく。絶望と焦りと不安と恐怖がないまぜになり、紬の身体に根を生やした。
 目の前から鏡子が遠ざかっていく。恐怖で動けなくなる紬を残して鏡子は蕗のもとに駆け出した。

 ガタン___。ガラガラ_______。

「駄目よ! 行かないで!」

 手伸ばして叫んでも彼女の身体に触れることはできなかった。一度も振り返らず炎の中に飛び込んだ鏡子は、そのまま降り落ちる瓦礫の中に消えていった。
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