アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜
Scroll-20:やっぱり親子!?
「いやしかし、暑いなあ——」
スーパーでの買い物を済ませ、おばあちゃん家へ向かっている。確か、次の角を曲がった辺りがおばあちゃん家だったはずだ。
見えた、『アイカワ美容院』——
幼い頃は、ただただ古臭い建物だと思っていたが、今となっては一周してレトロカワイイまである。お隣の、昔からあるパン屋さんも健在だ。
「さあ、入って入って」
今日は月曜日、美容院は定休日だ。おばあちゃんが玄関を開けると、カランという小気味よいベルの音が鳴った。
ああ、懐かしい……昔と変わらない店内……
ただ、どの器具もキレイに手入れされ、カットモデルの写真さんだけは新しいものへと貼り替えられていた。
店内を通り抜け、自宅へと上がる奥の階段へ。ヨイショヨイショと2階へと上がるおばあちゃん。この階段は角度がヤバい。若い私でも、少し怖いくらいだ。
「はあー、ちょっと休憩しよか……志帆も座り。クーラー付けっぱなしにしてたから涼しいやろ」
そう言っておばあちゃんは、テレビの電源をつけた。
テレビには関西のお笑い芸人さんが出ている。見たことがあるような、ないような……きっとこっちでは、有名な芸人さんなんだろう。
「それにしても、志帆がこんなキレイになってるとは思わんかったなあ。近所の田中さんも驚いてはったわ。ホンマにあんたの孫かって!」
おばあちゃんはそう言って笑った。田中さん……ああ、おばあちゃんが帰り道に話をしていた人か。
「そういやさ、おばあちゃん。——明日の火曜日も、お店は休みなんだよね?」
「うん、そうやで。どっか行きたいとこでもあるんか?」
「いや……もし出来るんだったらの話なんだけど……私の髪、カットしてもらえないかなって……?」
「お、おばあちゃんが、志帆のをか……? あっ、当たり前やんか! こんな嬉しいことあるかいな! ——今から晩ごはんの準備するから、あんたはこれ見て、やりたい髪型探しとき!」
おばあちゃんはそう言って、私にヘアカタログを手渡した。古いものかとおもいきや、1ヶ月前に発行されたばかりの新しいものだった。
偉いな、おばあちゃん。まだまだ、最前線で頑張ってるんだ——
***
「いや、ホンマ嬉しいわあ……あんたから髪触って欲しいやて。今も、若い子らの髪型追っかけててよかったわ」
おばあちゃんは、毎日2本だけ飲むと決めている缶ビールを飲んでいる。だが今日は特別なのか、空き缶は既に3つになっていた。「早くあんたと一緒に飲みたいわ」と、おばあちゃんは少なくとも今日だけで5回は言った。
「そうそう、こないだな。押入れ片付けてたら、古いアルバムが出てきてな。この頃の高志、今のあんたと同じ歳くらいちゃうか?」
「うわー、すご! お父さん、めっちゃ細い!!」
アルバムを開いて、思わず笑ってしまった。今ではポッコリお腹のお父さんが、細い……いや、細いを通り越してガリガリなのだ。そして今見ると決してカッコいいとは言えないけど、髪型をセットしているのが分かる。
「この頃のこの子はな、見た目のことばっかり気にしてて。モテると思ったって理由だけで、テニス部入ったり。勝手に店のヘアスプレー使ったりして、よう怒ったわ」
おばあちゃんは私がアルバムをめくるたび、写真を指さしてそんな風にコメントをくれた。
フフフ。それにしても、お父さんにもこんな時期があったんだ。
これってやっぱり、誰もが通る道なのかな? それとも、私たち親子がそっくりだってこと——?
***
「おばあちゃんは全然かまへんけど、学校で怒られへんのか? 色入れたりして?」
おばあちゃんがヘアカタログを見てそう言った。私がしたいと言ったモデルさんのヘアスタイルは、襟足にだけキレイなピンク色が入っている。
「うん、多分……クラスにもアッシュカラーに染めてる子がいるから」
「そやけどその子、不良やろ?」
「アハハ、不良じゃないよ。こないだの期末テストも、5教科全部90点以上だったし」
「ほんまか! 今の子はおもしろいなあ。——ほんじゃやるよ、ほんまに怒られへんねんな?」
私は「うん」と頷いた。
スーッと髪をつまみ上げては、迷いなくハサミを入れていくおばあちゃん。シャキシャキという音とともに、私の髪の毛が床に落ちてゆく。子供の頃に切ってくれていたときと、手際は変わらないように思う。
そして、生まれて初めてのブリーチ。白いクリーム状の液剤を、ハケで丁寧に塗りつけていく。
「やっぱり、ブリーチってしなきゃいけないの?」
「そりゃ色抜かな、あんなキレイなピンク入れへんからな」
凄いな……流石プロ。そういえば、どうしておばあちゃんは美容師さんになりたいって思ったんだろう?
今度、聞いてみるのもいいかもしれない。
スーパーでの買い物を済ませ、おばあちゃん家へ向かっている。確か、次の角を曲がった辺りがおばあちゃん家だったはずだ。
見えた、『アイカワ美容院』——
幼い頃は、ただただ古臭い建物だと思っていたが、今となっては一周してレトロカワイイまである。お隣の、昔からあるパン屋さんも健在だ。
「さあ、入って入って」
今日は月曜日、美容院は定休日だ。おばあちゃんが玄関を開けると、カランという小気味よいベルの音が鳴った。
ああ、懐かしい……昔と変わらない店内……
ただ、どの器具もキレイに手入れされ、カットモデルの写真さんだけは新しいものへと貼り替えられていた。
店内を通り抜け、自宅へと上がる奥の階段へ。ヨイショヨイショと2階へと上がるおばあちゃん。この階段は角度がヤバい。若い私でも、少し怖いくらいだ。
「はあー、ちょっと休憩しよか……志帆も座り。クーラー付けっぱなしにしてたから涼しいやろ」
そう言っておばあちゃんは、テレビの電源をつけた。
テレビには関西のお笑い芸人さんが出ている。見たことがあるような、ないような……きっとこっちでは、有名な芸人さんなんだろう。
「それにしても、志帆がこんなキレイになってるとは思わんかったなあ。近所の田中さんも驚いてはったわ。ホンマにあんたの孫かって!」
おばあちゃんはそう言って笑った。田中さん……ああ、おばあちゃんが帰り道に話をしていた人か。
「そういやさ、おばあちゃん。——明日の火曜日も、お店は休みなんだよね?」
「うん、そうやで。どっか行きたいとこでもあるんか?」
「いや……もし出来るんだったらの話なんだけど……私の髪、カットしてもらえないかなって……?」
「お、おばあちゃんが、志帆のをか……? あっ、当たり前やんか! こんな嬉しいことあるかいな! ——今から晩ごはんの準備するから、あんたはこれ見て、やりたい髪型探しとき!」
おばあちゃんはそう言って、私にヘアカタログを手渡した。古いものかとおもいきや、1ヶ月前に発行されたばかりの新しいものだった。
偉いな、おばあちゃん。まだまだ、最前線で頑張ってるんだ——
***
「いや、ホンマ嬉しいわあ……あんたから髪触って欲しいやて。今も、若い子らの髪型追っかけててよかったわ」
おばあちゃんは、毎日2本だけ飲むと決めている缶ビールを飲んでいる。だが今日は特別なのか、空き缶は既に3つになっていた。「早くあんたと一緒に飲みたいわ」と、おばあちゃんは少なくとも今日だけで5回は言った。
「そうそう、こないだな。押入れ片付けてたら、古いアルバムが出てきてな。この頃の高志、今のあんたと同じ歳くらいちゃうか?」
「うわー、すご! お父さん、めっちゃ細い!!」
アルバムを開いて、思わず笑ってしまった。今ではポッコリお腹のお父さんが、細い……いや、細いを通り越してガリガリなのだ。そして今見ると決してカッコいいとは言えないけど、髪型をセットしているのが分かる。
「この頃のこの子はな、見た目のことばっかり気にしてて。モテると思ったって理由だけで、テニス部入ったり。勝手に店のヘアスプレー使ったりして、よう怒ったわ」
おばあちゃんは私がアルバムをめくるたび、写真を指さしてそんな風にコメントをくれた。
フフフ。それにしても、お父さんにもこんな時期があったんだ。
これってやっぱり、誰もが通る道なのかな? それとも、私たち親子がそっくりだってこと——?
***
「おばあちゃんは全然かまへんけど、学校で怒られへんのか? 色入れたりして?」
おばあちゃんがヘアカタログを見てそう言った。私がしたいと言ったモデルさんのヘアスタイルは、襟足にだけキレイなピンク色が入っている。
「うん、多分……クラスにもアッシュカラーに染めてる子がいるから」
「そやけどその子、不良やろ?」
「アハハ、不良じゃないよ。こないだの期末テストも、5教科全部90点以上だったし」
「ほんまか! 今の子はおもしろいなあ。——ほんじゃやるよ、ほんまに怒られへんねんな?」
私は「うん」と頷いた。
スーッと髪をつまみ上げては、迷いなくハサミを入れていくおばあちゃん。シャキシャキという音とともに、私の髪の毛が床に落ちてゆく。子供の頃に切ってくれていたときと、手際は変わらないように思う。
そして、生まれて初めてのブリーチ。白いクリーム状の液剤を、ハケで丁寧に塗りつけていく。
「やっぱり、ブリーチってしなきゃいけないの?」
「そりゃ色抜かな、あんなキレイなピンク入れへんからな」
凄いな……流石プロ。そういえば、どうしておばあちゃんは美容師さんになりたいって思ったんだろう?
今度、聞いてみるのもいいかもしれない。