アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜
Scroll-19:いざ大阪へ!!
「いっ、一週間も!?」
「うん。もう、おばあちゃんからは大丈夫って返事もらってる」
私は来週の月曜日から一週間、大阪のおばあちゃん家に泊まることにした。ダメだと言われても面倒だから、先におばあちゃんの了承を取っておいたのだ。
「アハハ! 最近の志帆は、本当に活動的になったな。こないだは海で一泊、今度は1人で大阪に一週間か。——まあ、おばあちゃんがいいって言ってるなら、行ってくればいい」
「もう、パパは……普通、急に一週間も泊まるなんて言われたら、準備だって大変なんだから」
「まあ……ウチのおばあちゃんなら、上手くやってくれるでしょ。——にしても、志帆が一週間も家を離れるのか。なんか、志帆が大人になる前の予行演習みたいで、お父さんもドキドキするな」
大阪のおばあちゃんは、お父さんのお母さんだ。お父さんも今ではすっかり標準語だが、お笑い番組を観ていると、ついツッコミが関西弁になっていたりする。
そしてお父さんは、お母さんがお風呂に入ったのを確認すると、こっそりと私にお小遣いをくれた。
***
新幹線が静かに、大阪へ向けて動き出す。
貯めていたお小遣いを使って夜行バスに乗るつもりだったが、お父さんが新幹線のチケットを取ってくれた。お父さんの中では、夜行バスは色々と不安らしい。
ビュンビュンと流れていく車窓の景色。もう、あっという間に地元の景色ではなくなってしまった。
————————————
今日から大阪に一週間泊まりで行ってくる!
欲しいお土産とかある!?
————————————
琴音に送ったラインには、まだ既読がつかない。
玲央くんたちは、本当に素敵な人たちだ。知れば知るほど魅力的な人たちだし、これからもずっとずっと友だちでいたいって思う。
だけど1人になると、思い浮かべてしまうのは琴音のことだった。理由は、私にもわからない。
私たちには、お互いしか見ることが出来ない、SNSの鍵アカウントがある。琴音の最後の投稿は、翔くんが撮ってくれた、応援旗を真ん中に写る私たち。
そして私の最後の投稿は、この間の花火。“いいね!”こそ押してくれていたけど、そこにコメントはなかった。
***
結局、琴音へのラインは既読が付かないまま、新大阪駅に到着してしまった。琴音のことはひとまず忘れよう……大阪一週間の旅には壮大な計画が伴っているからだ。
日々少しずつ増やしていた【ルックス】の数値は、45にまで上がっている。そしてここ大阪で一気に70にまで引き上げ、更に帰宅してから新学期までに80に増やす計画だ。どうしても自宅で一気に増やすのには無理がある。そのための、大阪旅行計画なのだ。
私は新大阪の駅につくと、お手洗いへと向かった。個室に入り、アバター★ミーを立ち上げるためだ。
ルックス:0—————●——100 [ 70]
運動神経:0—●——————100 [ 15]
頭の良さ:0—●——————100 [ 15]
〘 決定する 〙
「これで、よしっ!」
〘 決定する 〙ボタンをタップすると、ウエストがずり落ち、肩の部分が少しはだけた。ウエストの紐を締め直し、衣服を整える。今日から一週間、私はこのスペックで生活していく。
個室を出て、全身鏡の前に立った。自分の姿を見て、ため息が出る。
まるで、モデルさんみたい——
そんな自分の姿に、しばし見とれていた。
***
新大阪の駅を出て、ローカル線へと乗り継ぐ。
大阪と言っても、おばあちゃんの家はそこそこの郊外にある。その郊外のとある場所で、美容院を経営しているのだ。スタッフはおばあちゃん1人だけ。そういえば幼い頃は、いつもおばあちゃんが髪を切ってくれていたっけ。
二度ほどの乗り継ぎを経て、やっとおばあちゃん家の最寄り駅に着いた。
エスカレーターを下りていくと、改札口の向こうにおばあちゃんが見える。私が手を振ると、おばあちゃんも手を振り返してくれた。
えっ!? なっ、なんで!?
というのも、手を振り返していたはずのおばあちゃんが、急にそっぽを向いてしまったのだ。
いっ、一体、どういう事……!?
「おばあちゃん! なんで無視するのよ」
私はおばあちゃんのすぐ側までに行って、声をかけた。
「ええっ、志帆やったんか! 最初は手振ってくれたから、あんたやと思ったけど、『こんな細い子違うわ!』と思って。ほんま、えらい痩せたなあ!!」
「——お、おばあちゃん、声大きいって」
周りの人たちが、私たちを見てクスクスと笑っている。
「ほんまや、恥ずかし。——ほな、行こか」
「今は地図アプリがあるから、迎えに来てくれなくても全然大丈夫だったのに」
「せっかくやから、スーパー一緒に寄ろうかと思ってな。あんたが食べたいもん、私の歳じゃよう分からんから」
おばあちゃんは私を見上げてそう言った。その顔はとても嬉しそうだ。
大阪の空もカラリと晴れている。
ここ、大阪での一週間が、今日から始まる——
「うん。もう、おばあちゃんからは大丈夫って返事もらってる」
私は来週の月曜日から一週間、大阪のおばあちゃん家に泊まることにした。ダメだと言われても面倒だから、先におばあちゃんの了承を取っておいたのだ。
「アハハ! 最近の志帆は、本当に活動的になったな。こないだは海で一泊、今度は1人で大阪に一週間か。——まあ、おばあちゃんがいいって言ってるなら、行ってくればいい」
「もう、パパは……普通、急に一週間も泊まるなんて言われたら、準備だって大変なんだから」
「まあ……ウチのおばあちゃんなら、上手くやってくれるでしょ。——にしても、志帆が一週間も家を離れるのか。なんか、志帆が大人になる前の予行演習みたいで、お父さんもドキドキするな」
大阪のおばあちゃんは、お父さんのお母さんだ。お父さんも今ではすっかり標準語だが、お笑い番組を観ていると、ついツッコミが関西弁になっていたりする。
そしてお父さんは、お母さんがお風呂に入ったのを確認すると、こっそりと私にお小遣いをくれた。
***
新幹線が静かに、大阪へ向けて動き出す。
貯めていたお小遣いを使って夜行バスに乗るつもりだったが、お父さんが新幹線のチケットを取ってくれた。お父さんの中では、夜行バスは色々と不安らしい。
ビュンビュンと流れていく車窓の景色。もう、あっという間に地元の景色ではなくなってしまった。
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今日から大阪に一週間泊まりで行ってくる!
欲しいお土産とかある!?
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琴音に送ったラインには、まだ既読がつかない。
玲央くんたちは、本当に素敵な人たちだ。知れば知るほど魅力的な人たちだし、これからもずっとずっと友だちでいたいって思う。
だけど1人になると、思い浮かべてしまうのは琴音のことだった。理由は、私にもわからない。
私たちには、お互いしか見ることが出来ない、SNSの鍵アカウントがある。琴音の最後の投稿は、翔くんが撮ってくれた、応援旗を真ん中に写る私たち。
そして私の最後の投稿は、この間の花火。“いいね!”こそ押してくれていたけど、そこにコメントはなかった。
***
結局、琴音へのラインは既読が付かないまま、新大阪駅に到着してしまった。琴音のことはひとまず忘れよう……大阪一週間の旅には壮大な計画が伴っているからだ。
日々少しずつ増やしていた【ルックス】の数値は、45にまで上がっている。そしてここ大阪で一気に70にまで引き上げ、更に帰宅してから新学期までに80に増やす計画だ。どうしても自宅で一気に増やすのには無理がある。そのための、大阪旅行計画なのだ。
私は新大阪の駅につくと、お手洗いへと向かった。個室に入り、アバター★ミーを立ち上げるためだ。
ルックス:0—————●——100 [ 70]
運動神経:0—●——————100 [ 15]
頭の良さ:0—●——————100 [ 15]
〘 決定する 〙
「これで、よしっ!」
〘 決定する 〙ボタンをタップすると、ウエストがずり落ち、肩の部分が少しはだけた。ウエストの紐を締め直し、衣服を整える。今日から一週間、私はこのスペックで生活していく。
個室を出て、全身鏡の前に立った。自分の姿を見て、ため息が出る。
まるで、モデルさんみたい——
そんな自分の姿に、しばし見とれていた。
***
新大阪の駅を出て、ローカル線へと乗り継ぐ。
大阪と言っても、おばあちゃんの家はそこそこの郊外にある。その郊外のとある場所で、美容院を経営しているのだ。スタッフはおばあちゃん1人だけ。そういえば幼い頃は、いつもおばあちゃんが髪を切ってくれていたっけ。
二度ほどの乗り継ぎを経て、やっとおばあちゃん家の最寄り駅に着いた。
エスカレーターを下りていくと、改札口の向こうにおばあちゃんが見える。私が手を振ると、おばあちゃんも手を振り返してくれた。
えっ!? なっ、なんで!?
というのも、手を振り返していたはずのおばあちゃんが、急にそっぽを向いてしまったのだ。
いっ、一体、どういう事……!?
「おばあちゃん! なんで無視するのよ」
私はおばあちゃんのすぐ側までに行って、声をかけた。
「ええっ、志帆やったんか! 最初は手振ってくれたから、あんたやと思ったけど、『こんな細い子違うわ!』と思って。ほんま、えらい痩せたなあ!!」
「——お、おばあちゃん、声大きいって」
周りの人たちが、私たちを見てクスクスと笑っている。
「ほんまや、恥ずかし。——ほな、行こか」
「今は地図アプリがあるから、迎えに来てくれなくても全然大丈夫だったのに」
「せっかくやから、スーパー一緒に寄ろうかと思ってな。あんたが食べたいもん、私の歳じゃよう分からんから」
おばあちゃんは私を見上げてそう言った。その顔はとても嬉しそうだ。
大阪の空もカラリと晴れている。
ここ、大阪での一週間が、今日から始まる——