叶わぬロマンティックに終止符を
……けれど、いくら待っても柊は来なかった。連絡先は知っていたけど、する気にもなれなかった。
『柊くんの進学先、結局わからないままだったねー』
『それなー。三組の莉奈ちゃんが聞いたらしいけど、教えてもらえなかったって』
『学年一の美少女が教えてもらえないなら無理じゃん? やっぱ東大なのかなあ、頭良いし』
クラスで最後のHRが終わってから聞こえてきた会話。柊は誰にも進学先を伝えていなかったみたい。……わたし以外、には。
友人としていちばん近いポジションに収まっていたわたしだけが彼の未来を知っていた。その上で、柊が「来ない」という選択肢を取ったのなら、それが答えだ。告白する前に、失恋してしまった。
諦めの悪いわたしはあと10分、あと5分だけ、と。わかっていながら柊が来るかもしれない、と時間を数えた。時計と何度も睨めっこをした。そのうち校舎の方向からも声が聞こえなくなってきて、卒業式の温かな雰囲気が沈んでいく感覚があった。ひとりで彼を待った裏庭、頬を叩く風が冷たくて泣きそうになった。
『柊、どの大学に進学するの?』
『んー』
『え、わたしにも言いにくいの?』
『いや、そうじゃないけど』
『なら教えてよ』
『……アメリカの、大学』
閉じ込めたロマンティックは、もう、叶わない。春は、訪れる前に過ぎ去ってしまった。