叶わぬロマンティックに終止符を
言葉にせずとも、気持ちは同じだったように思う。柊もわたしを信頼してくれていたし、きっと、好きでいてくれた。それでも本性はいじっぱりで口が悪くて、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたわたしたちが素直になれることなんて、なかった。
『柊、なんで彼女作んないの?』
『叶南こそ彼氏作らないのはなーんで』
『……好きなひとがいるから、とか言ったら?』
『ニセ優等生叶南が好くような変な男の顔が見てみたいって返す』
『うっざ』
『やっぱこえー』
この距離がちょうどよくて、大好きだった。わたしの唯一だった。
だから、最後。最後の日だけは、柊に素直になろうと思った。卒業式、人気のない裏庭に呼び出した。ここはよく委員会の雑務として、花壇の草むしりをしていた場所だ。柊とふたり、「猫を被った対価だ」、「めんどくさい、暑い」と文句を言いながら。
距離はいつも近くて、遠かった。素直になれずに、口からこぼれ落ちるたびに透明になる想いを伝えたかった。それが叶わないとしても。