叶わぬロマンティックに終止符を
「これ、ありがと」と改めてカフェオレにお礼を言って席を立った。プロジェクトメンバーすらも頭に入れられていないのは良くないな、と反省しながら会議室へ足を進めた。
会議の準備は若手が行うべきで、マイクレはおそらくわたしが最若手のはず。そうでなくともこういった雑務は率先してやっていこうと入社時から決めていた。今回は特に、約50人が入る大きな会議室。重役も出席するから、プロジェクターや手元のタブレットだったりの機器の不備がないように、と段取りを頭のなかでチェックしていった。
"ほら、イケメンで超ハイスペって話題になったあのひと!"
不意に芽奈の言葉が思考の隙間で思い返された。
……イケメンでハイスペかぁ。そんな少女漫画を地でいくようなひと、わたしは過去にひとりしか知らないなぁ、なんてもう会えないひとが一瞬浮かんでシャボン玉のように消えた。