陥れられた護衛悪役令嬢は婚約破棄からの追放を受け、Vtuberになることにしました。

 私の名前はアネモネ・ブランドー。
 いぶこー……『異世界異文化交流』という名前の事務所に所属するVtuber。

『というわけでー、本日はオフコラボカラオケです。はい、みなさん勝手に自己紹介してくださーい』
『初めましてみなさーん! いぶこー二期生、戦場の聖女とはわたくしのこと。オリヴィア・リューネルですわ。よろしくお願いします!』
『はーい、初めましての方もそうでない方もこんばんは〜! りゅうせいぐん☆所属の茉莉花(まつりか)お姉さんでーす』
『おおぉぉぉ、おなじくりゅうせいぐん☆所属の甘梨(あまり)リンでっす!』
『こんばんはー! いぶこー四期生、NGなしの護衛騎士系悪役令嬢、アネモネ・ブランドーです!』
『そしてら主催で枠主のコメットプロダクション所属のナターシャ・カルディアナお姉さんですよ。喜びなさい愚民ども。カラオケですよ』

 デビューから一ヶ月弱。
 本日は“貸し”を一つ返すべく呼び出されたスタジオで配信だ。
 いつものように挨拶はできたけれど、心臓がものすごくバックバックしている。
 オリヴィア先輩とナターシャさんは初対面ではないけれど、初めてのオフコラボが思い切り地球人――現地人とだなんてハードルが高すぎる!
 本日カラオケオフコラボを打診された時、私には当然……“貸し”の件があるから拒否権はないのだけれど……。
 それにしたってカラオケも初めてだし、ナターシャさん以外の他箱の人とのコラボも初めてだし、ましてオフコラボも初めてだし……初めてだらけで緊張してずっと体が震えているのだが。

「えっと、えっと、りゅうせいぐん☆さんという事務所はどんな事務所なのですか?」

 な、なにか、なにか話題を……とあわあわしながらお聞きしてみると茉莉花さん――茶髪茶目のめちゃくちゃ綺麗な人で、すっごくいい匂いがする――が、笑顔で
「わたしと甘梨ちゃんが所属するVtuber事務所です。とにかく色々な得意分野があるメンバーが揃っています。わたしは香りに関係する資格があって、ラジオや他の箱とコラボが大好きなんです。今回のコラボもわたしからナターシャさんに打診しました」
「え、そうだったんですか。ナターシャさんから話をいただいたので、ナターシャさんが発起人なんだと思っていました」
「わたしじゃないですよ。わたし、人間嫌いなので誘われないとコラボとかやらないです」
「ナターシャちゃん、人間嫌いっていう割にコラボ誘うと絶対断らないし、スケジュール調整もやってくれるし他の人も集めてくれるし、本当にツンデレ……」
「あらあら、茉莉花さんとは今後共演NGですかねぇー?」
「あーん、ごめーん」

 仲良しさんらしい。

「で、甘梨ちゃんはりゅうせいぐん☆の六人目ライバーなの。りゅうせいぐん☆は何期生とかないのよね」
「へー、そうなんですか」
「うちの事務所で複数人デビューしたのは甘梨ちゃんの一つ下の後輩のStars(スターズ)くらいねー」

 そうなのか、他の事務所はユニットデビューとかしないこともあるのか。
 事務所の“色”という感じだな。

「甘梨ちゃんはゲーム実況中心で配信しているの。ね」
「は、はい。ゲームだったら色んな人と、お話しできるので……」

 と、言って茉莉花さんの方に体を寄せる甘梨さん。
 ナターシャさんに「甘梨さん、あんまり茉莉花さんに体寄せるとカメラが感知してくれなくなってシンクロしちゃいますよ」とVtuberとしてはなかなか身も蓋もないことを言い放つ。

「結構人見知りさんなんですか」
「そうなんです。でもこうして甘えてもらうとお姉さん、めちゃくちゃヒャッハー! ってなっちゃう〜」

 茉莉花さん、あまりにも“お姉さん”なんだな。
 弟のいる姉としてお姉さん力が負けている気がしてきた。

「アネモネさん」
「はい? なんでしょうか、オリヴィア先輩」
「今日からお姉ちゃんって呼んでいただいてもいいですよ」
「いえ、私は姉なので。そういうのは……」
「くっ」

 オリヴィア先輩が羨ましくなっちゃってる。
 やんわりお断りしたけど、本当に悔しそうな顔しているんだが。

「まあ、こんな感じの五人で今日はカラオケをやっていくわけです。じゃあ最初の一曲歌いたい人」
「え? こういうのは発起人のナターシャちゃんが一曲目じゃないの?」
「わたしが歌っていいんです? ハードル爆上がりしますよ? わたしのあとに歌う人たち」
「はーい! 茉莉花一番! 歌います!」

 笑顔でそんなことを言われて全員が顔を真っ青になった。
 コメント欄が偶然目に入ったが『それはそう』『ナターシャ一番手はまずい』『ハードル二メートルになる』『ハードルえぐい』とリスナーさんも完全同意。
 ですよね!

「〜〜〜♪」

 とはいえ、茉莉花さんもとても上手い!
 初めてお会いしたので、当然初めて歌をお聴きしたのだがラジオを中心に配信をしているだけあって発声がとても綺麗。
 思わず聞き入ってしまう。

「アネモネ、今のうちに歌ってしまいましょう」
「ですね」

 茉莉花さんの歌が終わる前に、オリヴィア先輩とひそひそ話す。
 ナターシャさんのあとは……嫌だ!

「はい! 次はわたくしとアネモネが歌いますわ!」
「でもあの! 私たちカラオケ自体初めてですし、この世界の歌とかまだ勉強中なのであまり期待しないでくださいね! ガチで!」

< 41 / 46 >

この作品をシェア

pagetop