〜続〜空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「名波くん、今日のゼミのことなんだけど」

「あ、うん。何?」


名波颯翔(ななみさやと)。

それが俺の名前。

いかにも海のある街で産まれました、みたいな名前。

高校時代散々カッコいいって言われた名前。


「塚田教授緊急オペが入ったから来られないって。ウチらだけでやってもいいんだけどさ…ね?」


つまり、だ。

俺の一押しが欲しい、と。


「じゃあ、今日はいいんじゃない?皆にも連絡して」

「名波くんが言うなら大丈夫だよね!オッケー、連絡しとく」


そう言って颯爽と門に向かって行く彼女を見送り、俺は逆方向へと歩く。


「…めんどくさ」


そう、呟いて。

昔から医者を目指して勉強し、中高のテストで学年の総合順位が3番以下になることはなく、今も大学病院附属の医大生。

しかも主席。

俺の発言には権力がある。

俺の見てくれやこんなちっぽけな世界にしか通用しない権力でも

それを絶対とする人が多くいて

俺はそれに心底うんざりしている。

そんなのを気にしないのは、アイツくらいか。


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