義兄の愛に人生観を変えられ……
*
「お母さん、久しぶり」
ずっと疎遠だった母に勇気を出して電話をした。
母に隠れながらでも夢を追うことはできるけど、そこを超えなければまた大きな壁に妨害されるかもしれないと思っていたのだ。
『元気にしているの?』
「うん」
亮太君から母に連絡が来ていて、同じ職場で働いているということは知っていたようだ。
「やっぱり私ね、小説を書くことをやめられない。夢を諦めたくないって思ったの」
『そんな不安定な人生は危ないって教えたでしょ?』
今までの私なら、何も言い返せずに「そうだね」と言って電話を切っていたかもしれない。でもここを乗り越えると決めたのだ。
「もう私は大人。自分のことは自分で決めて生きていきたいと思ってる」
電話越しに大きなため息が聞こえた。
「お母さん。私のことが心配だったんだよね。お母さんは私のことを愛してくれているから、いろいろ考えて言ってくれていたんだなって少しわかった。ありがとう」
それでも母は電話をして無言だった。
「必ず恩返しするから。心配かけないようにする。見守っていてほしいの」
「勝手にしなさい。辛くなったからって泣きつかれてもお母さんは守ってあげられないから、覚悟しなさい」
通話がそこで終了されてしまった。
しかしこれは母親なりの了解という言葉なのだと私は思う。
今までだったら絶対に私がイエスと言うまで母は一歩も引かなかった。
新しい自分に生まれ変わる第一歩を踏み出せたような気がした。