恋の囚人番号251107都合いい女
「せりっ。マジびっくり!!
ウケんからっ」
マリはあの夜から、
興奮冷めやらぬ様子で
何かと話題にしたがる。
昼休みになると同時に、
短い制服の丈など気遣いもせず、
マリがヒラヒラと蝶のように舞いながら
教室に駆け込んできた。
先日の「それ」=ひとめぼれ
で猪突猛進したアホな私せり。
高校3年生。18歳。
バイトに、ダイエットに、お洒落に、夜遊び
に励んだりしながら、
時々恋をしたりしなかったり。
普通の
どこにでもギャルだった。
家族は、パパとママと犬一匹。
中の上ぐらいの家で何不自由なく、
やや放置気味ですくすく育った。
洋楽が好き。
特にR&Bは日常を彩るBGMとして欠かせない。
まさにno music no life
高校3年生といえば進路もそろそろなわけだけど、
今が楽しけりゃ良し。的な。
進学にはのんびりで、
なんの志もなく適当に大学に行くのだと
人ごとのように未来を眺めてる。
でも、
あわよくば大学行ったら
在学中に留学なんかして
本場のクラブカルチャーで
音楽に浸りたいな〜って
ぼんやり希望中。
でっかいヘッドホンで
LAやNYを闊歩する自分を妄想しては、
悪くないじゃんなんて思っちゃってる。
そんな私が、あの夜
いつもと変わらない夜になるはずだったあの日
あっちゅー間に一目惚れ。
「聞いてんのか~い?」
マリが笑ってる。
今日もマリはお人形さんみたいだった。
棒みたいな手足は
ちょっとのくすみもなくツヤツヤ。
腰まであるサラサラの金髪に、
いつも濡れてる瞳と唇は、宝石みたい。
あ、私も新しいリップ欲しいなぁ。
「え?なんだっけ?」
「もうっ!一本釣りしに行ったイケメン!
どう?あれから」
一本釣りって・・・ま、確かに。そか。
結局あの後は、
笑い上戸のロン毛に急かされLINEを交換した。
「GINJYO⋯?くん」
LINEのアイコンをしげしげ見つめて
初めて名前を知る。
「銀はそっけねーなぁ。
な?こーゆー者です〜」
脇からロン毛が名刺を差し出してきた。
「ジンくん。なんで俺の名刺持ってんだよ。
ってか勝手に配ってんなよ」
LINEに続いて名刺をしげしげ見つめた。
株式会社 雷鎚開発興業
取締役専務
雷鎚 銀丈 GINJYO IKAZUCHI
偉いひと?
ただイケメンかと思ったのに。
「銀丈くん」
改めて口にすると
胸の奥が熱くなった。気がした。
「ん?」
返事した主を見上げると、
遥か上から見下ろす銀丈くんがいた。
かっこよっっ
それだけで
舞い上がってしまったのだった。
恐るべし、一目惚れ。
「てかさ、イケメン、セレブ、キラキラネーム
⋯マジ王子過ぎる。胡散臭っ」
マリの笑い声で我に返った。
イケメン⋯正解。
ガチセレブ⋯24歳で役職だから多分正解。
キラキラネーム⋯そこ重要か?でもま、正解。
総合的判断により王子⋯正解。
マリ全問正解です、オメデトウ。
「それな。
でも連絡ないし。ノリじゃん?」
軽く流してマリの持ってきたポッキーをつまむ。
バッサリ言ってしまったのは、
連絡がないことで
がっかりしてる自分を見せたくなかったから。
自虐でプライドを守るしかなかったから。
そう、あれから2週間経っても連絡はない。
毎朝毎晩完璧な髪型を目指し、
ネイルもメイクも気合い入れてたけど、
LINEの通知音には毎回がっかりさせられた。
「腹減ったぁ~
なになに?俺がイケメン?だろー。」
後ろからやって来た前髪命のコウヘイが
近くの椅子を引き寄せて座った。
「あんたホコリ臭いよっ」
思わずポッキーを隠した。
「体育だったんだよっ。マジあちー。
でも髪は死守。これ基本な。
俺が1番俊足でイケメンだったな」
「ばーか。」
「ばーか。」
呆れたマリと私の声が重なる。
高2高3と同じクラスのコウヘイは、
確かに女受けするビジュだけど、
そんなの抜きにして気安い感じが楽で、
私とマリの三人はよくつるんでた。
将来音楽に関わる仕事したいコウヘイは
洋楽にも詳しくて、頼もしい同志だったし。
「せりがさ。
クラブでイケメン一本釣りしたんだけど
連絡ないんだって。」
「一本釣りて。お前ら漁師か。
あ、こないだのJo’s?
俺も行きたかったな〜。バイトで残念。」
「じゃまた週末行こうよ、あんたの車で。」
コウヘイは
他校の彼女にカッコつけたくて、
せっせとGSでバイトをして、
せっせとお金を貯めて、
せっせと教習所に通って
誕生日きっかりに免許を取った。
有言実行!と
胸を張るコウヘイをおだてては、
よく足代わりに使っているけど
本人も満更じゃなさそうなので
今のところウィンウィンなのだ。
マリの提案に
「おういいね。兄貴に車借りとく。」
仲良し3人組の週末ナイトプラン
が、ちゃちゃっと決まると
マリとコウヘイは、
次々変わる楽しげな話題で盛り上がっていた。
「やっぱノリかぁ~」
私は小さくぼやき、
愛想笑いしながら、
気分はすっかり曇天。
ちょっとは私を
思い出してよ。
ウケんからっ」
マリはあの夜から、
興奮冷めやらぬ様子で
何かと話題にしたがる。
昼休みになると同時に、
短い制服の丈など気遣いもせず、
マリがヒラヒラと蝶のように舞いながら
教室に駆け込んできた。
先日の「それ」=ひとめぼれ
で猪突猛進したアホな私せり。
高校3年生。18歳。
バイトに、ダイエットに、お洒落に、夜遊び
に励んだりしながら、
時々恋をしたりしなかったり。
普通の
どこにでもギャルだった。
家族は、パパとママと犬一匹。
中の上ぐらいの家で何不自由なく、
やや放置気味ですくすく育った。
洋楽が好き。
特にR&Bは日常を彩るBGMとして欠かせない。
まさにno music no life
高校3年生といえば進路もそろそろなわけだけど、
今が楽しけりゃ良し。的な。
進学にはのんびりで、
なんの志もなく適当に大学に行くのだと
人ごとのように未来を眺めてる。
でも、
あわよくば大学行ったら
在学中に留学なんかして
本場のクラブカルチャーで
音楽に浸りたいな〜って
ぼんやり希望中。
でっかいヘッドホンで
LAやNYを闊歩する自分を妄想しては、
悪くないじゃんなんて思っちゃってる。
そんな私が、あの夜
いつもと変わらない夜になるはずだったあの日
あっちゅー間に一目惚れ。
「聞いてんのか~い?」
マリが笑ってる。
今日もマリはお人形さんみたいだった。
棒みたいな手足は
ちょっとのくすみもなくツヤツヤ。
腰まであるサラサラの金髪に、
いつも濡れてる瞳と唇は、宝石みたい。
あ、私も新しいリップ欲しいなぁ。
「え?なんだっけ?」
「もうっ!一本釣りしに行ったイケメン!
どう?あれから」
一本釣りって・・・ま、確かに。そか。
結局あの後は、
笑い上戸のロン毛に急かされLINEを交換した。
「GINJYO⋯?くん」
LINEのアイコンをしげしげ見つめて
初めて名前を知る。
「銀はそっけねーなぁ。
な?こーゆー者です〜」
脇からロン毛が名刺を差し出してきた。
「ジンくん。なんで俺の名刺持ってんだよ。
ってか勝手に配ってんなよ」
LINEに続いて名刺をしげしげ見つめた。
株式会社 雷鎚開発興業
取締役専務
雷鎚 銀丈 GINJYO IKAZUCHI
偉いひと?
ただイケメンかと思ったのに。
「銀丈くん」
改めて口にすると
胸の奥が熱くなった。気がした。
「ん?」
返事した主を見上げると、
遥か上から見下ろす銀丈くんがいた。
かっこよっっ
それだけで
舞い上がってしまったのだった。
恐るべし、一目惚れ。
「てかさ、イケメン、セレブ、キラキラネーム
⋯マジ王子過ぎる。胡散臭っ」
マリの笑い声で我に返った。
イケメン⋯正解。
ガチセレブ⋯24歳で役職だから多分正解。
キラキラネーム⋯そこ重要か?でもま、正解。
総合的判断により王子⋯正解。
マリ全問正解です、オメデトウ。
「それな。
でも連絡ないし。ノリじゃん?」
軽く流してマリの持ってきたポッキーをつまむ。
バッサリ言ってしまったのは、
連絡がないことで
がっかりしてる自分を見せたくなかったから。
自虐でプライドを守るしかなかったから。
そう、あれから2週間経っても連絡はない。
毎朝毎晩完璧な髪型を目指し、
ネイルもメイクも気合い入れてたけど、
LINEの通知音には毎回がっかりさせられた。
「腹減ったぁ~
なになに?俺がイケメン?だろー。」
後ろからやって来た前髪命のコウヘイが
近くの椅子を引き寄せて座った。
「あんたホコリ臭いよっ」
思わずポッキーを隠した。
「体育だったんだよっ。マジあちー。
でも髪は死守。これ基本な。
俺が1番俊足でイケメンだったな」
「ばーか。」
「ばーか。」
呆れたマリと私の声が重なる。
高2高3と同じクラスのコウヘイは、
確かに女受けするビジュだけど、
そんなの抜きにして気安い感じが楽で、
私とマリの三人はよくつるんでた。
将来音楽に関わる仕事したいコウヘイは
洋楽にも詳しくて、頼もしい同志だったし。
「せりがさ。
クラブでイケメン一本釣りしたんだけど
連絡ないんだって。」
「一本釣りて。お前ら漁師か。
あ、こないだのJo’s?
俺も行きたかったな〜。バイトで残念。」
「じゃまた週末行こうよ、あんたの車で。」
コウヘイは
他校の彼女にカッコつけたくて、
せっせとGSでバイトをして、
せっせとお金を貯めて、
せっせと教習所に通って
誕生日きっかりに免許を取った。
有言実行!と
胸を張るコウヘイをおだてては、
よく足代わりに使っているけど
本人も満更じゃなさそうなので
今のところウィンウィンなのだ。
マリの提案に
「おういいね。兄貴に車借りとく。」
仲良し3人組の週末ナイトプラン
が、ちゃちゃっと決まると
マリとコウヘイは、
次々変わる楽しげな話題で盛り上がっていた。
「やっぱノリかぁ~」
私は小さくぼやき、
愛想笑いしながら、
気分はすっかり曇天。
ちょっとは私を
思い出してよ。