悪魔を召喚したならば

 そうして、自習室に空席を見つけた私は、黙々と勉強している利用者たちと同類のような顔をして、しれっと座る。
 そのときになってようやく、書庫の照明が青白かったことや、音が皆無だったことを知った。
 心臓は依然としてドキドキしたまま。

 本の中は、長ったらしい注意書きのあとに、たくさんの魔術が載っている。
 私の探していた魔術は、その最後に発見することができた。

 “悪魔を召喚する黒魔術”

 ノートとシャーペンを取り出し、書き写す。
 一語一句間違えないように慎重に。
 心臓の音がうるさいせいで、周りの字を書く音だとかキーボードを叩く音だとかが遠ざかる。
 私だけ見えない膜で覆われてしまったみたい。

(書けた!)

 ようやく深く息ができる。

 ノートに書き写してしまったあとだから、本を戻すのは、持ち出すときよりもずっと気楽。
 けれど、やっぱり誰にも見つかることはなく返すことができた。

(これで燈吏(とうり)くんに会える!)

 図書館を出た私は、駆け出していた。
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