頭ポンポンはセクハラです!~不器用地味子の恋のお相手~
*


「実花といればいるほどどんどん好きになってく。俺ばっかりこんなに好きで、ほんとどうしてくれんだよ」
「お、俺ばっかりじゃないよ!?」
 私は理人くんの襟を掴んで訴えた。
「好き」
 そう言って、背伸びして今度は自分から唇を重ねた。
 しばらくくっつけたあと、そっと離す。理人くんは目を丸くしていた。
「理人くんとあの子が付き合うのかなって思って、すごく悲しかった。今日は仕事失敗してばっかりだった」
「……本当に?」
 私はこっくりと頷いた。
「じゃあ、これもオーケー?」
「へ?」
 理人くんの手がそっと頭に載った。そしてゆっくりと髪を撫でられる。
「もうセクハラじゃないよな?」
「わざとしなかったの?」
 私は混乱した。キスはするのに。
 理人くんは私の髪をすきながら微笑んだ。
「いや、付き合ってるのにまたセクハラだって言われたら、さすがに立ち直れないから」
「い、言うわけないじゃん!」
 私は思わず声を荒げた。
「じゃあ、何? 今まであまり私に触れてくれなかったのは私がセクハラだって言うと思ってたから?」
 私の剣幕に恐れをなしたように、理人くんはもごもごと口を動かした。
「そこまでは……と言いたいところだけど。いや、正直なところ自信なかった」
 理人くんは項垂れた。
「言っただろ。初めてなんだよ、実花が」
 理人くんはおそるおそるといった体でもう一度私の髪に触れた。
「実花に好かれたくって仕事頑張ってみたり陽キャ気取ってみたりはしたけど、実際問題どうやったら好きになってもらえるかわかんねんだよ。どのくらい触っていいものかも」
「い、嫌だったらその時は嫌って言うから、触ってよ!」
 思わず言ってしまってから体中が熱くなった。理人くんは目を丸くしている。それはそうだ。「触ってよ」とか言ってしまった。
 だって不安だったんだよ。ぎゅってして欲しかったし、髪を撫でて欲しかった。
 俯いて拳を握りしめていると、理人くんの手が背中に回ってきた。そっと抱き締められる。
「……頭、もう一回撫でていい?」
 頭の上から理人くんの低い声が聞こえてきた。
「……いいよ」
 ぽんと軽く手が頭に載った。
 もしかしたら、理人くんと私は同じだったのかもしれない。
 恋愛に不器用で、でも相手に好きになって欲しくて頑張って。空回りしたりもして。
 勝手に線を引いていたけれど、それはかえって失礼なことだったのかもしれない。
 理人くんの胸に顔を埋めていると、上から緊張したような声がしてきた。
「えーと、今日、うち、泊まる?」
 私はぱっと体を離した。理人くんを見上げる。
「そっ、それはちょっと、あの」
「嫌なら嫌って言うんだろ?」
 理人くんがからかうように私を見下ろした。私は頬を膨らませ、そして顔を背けて呟いた。「嫌じゃないけど、もうちょっと待ってください……」
「待つよ」
 理人くんが私の頬にキスをした。
 そして二人、顔を見合わせて笑い合った。
 こうして少しずつ、お互い好きを重ねていけたらいいね。




 

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