告白する勇気がないので、ヴァンパイアと契約してしまいました。
「あ〜悠真先輩、今日もかっこいいな」

教室の窓から、サッカー部のキャプテン白井悠真先輩を眺める。それが私の一番の楽しみだ。

「ま〜たそんなこと言っているよ。そんなに好きなら話しかければいいのに。」

呆れ顔でそう呟くのは親友のさっちゃん。

「無理無理無理!絶対無理!私なんかが話しかけたら、絶対迷惑だよ...」

なぜ私がこんなにも悠真先輩が好きなのかというと...

まず、幼い頃読んだ童話の王子様に顔が似ている。
恥ずかしくてそんなこと親友のさっちゃんにも言えないけど...


それに、入学式の日、自転車でこけたときに、「大丈夫?これ使って」とハンカチをくれた。

運命だと思った。

悠真先輩は返さなくていいからと言って去って行った。だから今も大事にハンカチは持っている。

「それじゃ、何にも進展しないじゃん。自信なさすぎ。」

さっちゃんがため息をつくのは毎日のことだ。
正直このやりとりを何回繰り返したかはわからない。

「あんたさ、もうちょっと現実的に考えないと、一生彼氏なんかできないよ」

さっちゃんは昔から現実的で、夢みがちな私とは正反対だった。
サバサバとした性格でとっても頼りになる。

「さっちゃんみたいに現実主義じゃないもん。運命の人と出会って、こう、ロマンチックな恋愛がしたいの」

「はいはい。だったら、いつまでも夢見てなさい。でも少しは自分から行動しないと、何も変わらないよ?悠真先輩とせっかく運命的な出会いをしたって、手繰り寄せられなかったら意味ないじゃん。」

「う...」

痛い所をつかれた。正直さっちゃんの言う通りだ。童話のお姫様みたいに、待っているだけではダメなのだと思い知らされる。

それでも自信はない。
相手は女子から人気No.1のモテ男子。私のような至って普通な女子高生に何ができるのだろう。

正直「何をしても無駄」と言う卑屈な考えで動けないのだ。


「あ、やば!こんな時間。私バイト行かないと。じゃあね!」

「あ、うん。バイバイ。」

さっちゃんは駆け足でひと足さきに帰った。

さっちゃんが帰ってから、少し、悠真先輩を眺めたところで、私も帰路についた。


いつもと変わらない、帰り道。そう、何もしないからいつもと変わらない毎日が過ぎ去るだけなのだ。

「ああ、私ってどうしてこうなんだろう」

そう呟いたとき、川で溺れている黒猫を見つけた。

「嘘...!どうしよう。」

正直戸惑った。幼い頃海で溺れたことがあってから、水が苦手だった。
それでも時間はない。

咄嗟に、川に飛び込み、黒猫を助け出す。

正直自分がこんな行動に出るとは思いも寄らなかった。
いざという時は、動けるのか...ちょっと意外だった。

黒猫を抱えて、土手に座る。

黒猫は「にゃ〜」となきながら真っ直ぐこちらを見ている。
なんだか「ありがとう」と言われている気がした。

「ふふ、どういたしまして。あなたはどこから来たの?もう川に近づいちゃダメだよ。」

黒猫は濡れた自分の毛を舐めていて、こちらの声は届いていない様子だ。

「君を助けた時みたいな勇気が出たらいいのに...そうしたら悠真先輩に話しかけられるのに...」

黒猫は「にゃ?」とこちらを向く。

「まあ、猫にこんなこと言っても仕方ないか。」

よく見ると猫には首輪が着いている。赤い宝石のような飾りの着いた、綺麗な首輪。
きっとお金持ちが買っている猫なのだろう。

「君、飼い猫なの?早くご主人様のところに帰った方がいいよ。きっと心配してるから。」

そう言った瞬間猫は「にゃっ」と鳴きながらぴょんっと膝からおり、どこかへ言ってしまった。

「なんだか不思議な日...」
猫を見送りながらそう呟く。

ーーー
その夜。ふわりとした風で目が覚めた。
窓、閉め忘れたんだっけ...

そう寝ぼけながら窓の方へ歩もうとしたその時、
窓に、見知らぬ男の人が座っていた。

月明かりはその人を怪しく照らしている。
何が起きているのかわからず、硬直していると、男の人が言葉を紡ぎ出す。

「君。僕と契約しない...?」
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