月夜に吠える、君の名を 《続》

最終回 解放の朝


夜が明けきる前、牢屋の外で小さな音がした。
カチリ……
鍵が回る音。

扉がわずかに開き、影がひょいと顔を覗かせた。
それは以前、紗羅に親切にしてくれた若い村人だった。

[ごめんな……遅くなって……俺、知ってるんや……あの夜……2人が呪いと戦ってた所を遠くから見てたんや……。あんたら2人は、化け物やない。化け物は、2人を化け物扱いしてる俺らや……。俺がこの場所から逃してやる。]
囁く声は震えていたが、その瞳は真剣だった。

健と紗羅はすぐに立ち上がり、牢を抜け出す。
村人の足音を避けながら辿り着いたのは、村の中心にある広場。
そこに集まった人々の前に、2人は立った。

健は深く息を吸い込み、上着を脱いだ。
『見ろ。もう俺には獣の毛も爪もない。呪いは、あの満月の夜に終わったんや。』
ざわめきが広がる。
"……そんなはずは……"と誰かが言いかけた時、紗羅が健の腕を取り、まっすぐ見上げた。
「この人は、もう人間です。私がそばで見てきました」
『そうや。紗羅は、ずっと俺の傍に居てくれて呪いを解いてくれた。こんな風に……』
その瞬間、健は紗羅を抱き寄せ、みんなの前で静かに唇を重ねた。
触れた途端、空気が変わった。
まるで温かな光が二人を包み込み、村全体に広がっていくようだった。

その光景に、村人たちは息を呑み、やがてざわめきが感嘆の声へと変わっていった。

村長が一歩前に出る。
《……わしらが間違っていた。すまなかった。》
こうして、2人は解放された。
その日から、健と紗羅は堂々と村の家で暮らし始めた。
朝日を浴びながら健が微笑む。
『これからは、ずっと一緒や!』
紗羅も笑顔で頷き、二人の新しい日々が始まった。

もう、鉄格子はどこにもない。

こうして……
村では愛し合う2人のキスが"呪いを解く方法"だと広まったのであった
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