マリオネット
 夜の街と言われている繁華街、日中の人通りは少なかった。明るいため、昨日みたいに怖くはない。

 襲われた公園に入り、見渡す。彼はいなかった。

 本当は家がある人なのかな。
 それとも昨日、ケガをして運ばれた?
 私が押さえつけられていたベンチの近くを見るも、特に変った形跡はない。

 事件や事故があった時によく見かける「立ち入り禁止」みたいな警察のテープも貼っていないため、何もなかったんじゃないかと考える。
 場所を移動したのかな。
 私は、近くの公園を探すことにした。二時間くらい探しただろうか。それらしき人は見つからなかった。
 せめて一言お礼を伝えたい。一人で逃げ出してしまったことを謝りたい。

 もう一回、最初の公園を見に行こうかな。
 そう思った時だった。
 陸橋の下に段ボールを敷き、座って俯いている男性がいる。
 昨日の人と似ている。足早に近寄ってみる。

 あっ!たぶん、この人だ。服装が昨日と同じ。
 季節的にはまだ早いんじゃないかと思うカーキ色の上着に破れたジーンズ。
 顔を上げたら、髪の毛で隠れてしまいそうな毛量。髪色は黒と茶色が混ざっており、以前は染めていたのではないかと予想ができた。

 緊張する。
 私はふぅと深呼吸をして、話しかけた。
「あのっ!」
 彼は俯いたままで何も反応がない。
「あの、すみません!」
 ダメだ。
「すみません、お兄さん!」

 やっと顔を上げてくれた。無言でこちらを見ている。
 髭も眉毛も手入れがされていない。髪の毛もウェットに見えた。
「だれ?」
 この声、やっぱり昨日の人だ。
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