マリオネット
 彼がいつも行っているスーパーやその周辺、初めて会った時の公園や初めて会話をした橋の下まで行った。
 でも彼はいなかった。二時間くらい探した。

 もしかしたら、家に帰っているかも知れない。
 そんな期待を抱きながら、帰宅をする。
 鍵を開け、室内に入る。
 彼は、いなかった。
 
 夕方になる。

 荷物を投げて、ベッドにうつ伏せになる。

 昨日まで、一緒に寝ていたのに。
 急に訪れる別れ。
 次第に涙が出てきた。

「う……。あぁ゛……」

 声が抑えられないほど、泣き叫ぶ。
 私がもっと彼に優しくしていたら?
 もっと大切にしていたら?
 昨日「捨て猫がいる」なんて言わなかったら?
 もう後悔しても遅いのに。彼は帰って来ない。
 また一人になってしまった。
 辛い、悲しい、苦しい。

 やっぱり私は、凪のことを好きになってしまっていたんだ。

「好きになっちゃいけない」
 そう決めていたけれど、やっぱり無理だった。

 彼の優しさ、温かさ、なんでも聞いてくれるところ、大切にしてくれるところ、全部大好きだった。
 
 いや、今でも大好きだよ。

「戻って来てよ……。凪……」

 たくさん謝るから。もっと大人になるから……。
 涙は止まらず、鼻水も出てきて、顔はぐしゃぐしゃだった。

 もう凪のいない生活なんて嫌だよ。
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