マリオネット
 そんなに傷は酷くなさそうだけど、薬……。
「私、薬買ってきます。ここに絶対いてください。約束です」
 そう言い放ち、近くの薬局に行こうとした。

 しかし
「いいんだ。俺、もう生きたくないから。どうなろうと別に構わない。だから、余計なことをしないで」
 そう言って彼は立ち上がり、どこかへ行こうとした。
「ちょっと!」
 私は彼の後を追った。

「ほっといて」
 そう冷たく彼は言い放った。

 あまり食べていないのだろう、痩せているため頬に膨らみはない。髪の毛で隠れているも、僅かに見える肌の色は黄疸だった。

「やだ!」
 私は彼の手を掴んだ。

「ねぇ。俺、汚いから触るなって言ってるじゃん」

「ダメ!離さない!」
 
 どうしてここまで彼に執着をしてしまったのか、わからなかった。でもここで離したら、もう二度と会えない気がした。
 首都中心に位置する交差点の近く、大勢の人の視線が私たちに集まる。

「わかった。じゃあ、場所を移動しようか?」

 彼が視線を気にしてか、人の目がいかないような、地下通路の隅で話をすることになった。
 どうしよう、何を話そう。思ってること聞いていいのかな。
「なんで死のうと思ってるんですか?」

「あなたには関係ないでしょ。生きてたってしょうがないから……」
 彼はずっと俯いている。

「家族はいるんですか?」

「いないよ。もともと孤児だし。施設で育った。だから、一人。俺が死んで悲しむ人なんていない」

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