マリオネット
 その割には、最近まで普通に生活をしていたような印象を受けた。
 髪の毛が半分くらい染まっているし。急な解雇とか?
 この人、私なんかより大変な人生だったんだろうな。なのに私はフラれたっていう理由だけで好き勝手生きてきた。
 
 一人ぼっちの寂しさはあなたほどじゃないけど、わかるから。

「このまま食べなければ死ぬでしょ、人間。それでいいと思っている」
 彼がポツリ呟いた。

 私は、この人を死なせたくはない。
 昨日、私だって本当に死んじゃうんじゃないかと思った時「助けて」って言葉が出た。あれが本心なんだ。本当は死にたくない、生きたいと思っていることを自覚させてくれた人だから。

「私も昨日、死んじゃいたいって思ってたんです。でもあなたが助けてくれた。死なせてくれなかった責任を取ってください」

「はぁ?それはあなたが助けてって……」
 彼は私の言葉に理解ができないと言った様子だった。

「もし、あなたが死んでもいいと思っているのなら、私にあなたの命をください」
 
 こんな発言をしたら、正気じゃないと思われるかもしれない。

「えっ?」

「じゃあ、正直に言います。私、一人じゃ寂しいんです。孤独で死んじゃいそう。だから、あなたが近くに居てください」

 彼は困っているようで何も言葉が出てこない。

 しばらくして
「あなただったら、いくらでもいるでしょ。一緒に居てくれる男。探したらいいよ、そういう人を」
 ふぅと彼はため息をついた。

「もう、男なんて信用できません。私もいろいろあったんで」

「って、俺、一応、男なんだけど……」

 彼は諦めたという表情をし
「じゃあ、俺、どうすればいいわけ?」
 そう聞いてくれた。
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