マリオネット
 その夜――。

「ねぇ。凪、初めて逢った時のこと覚えてる?」
 横で寝ている彼に問いかける。

「もちろん覚えているよ」

「私をマリオネットの状態から救ってくれたのは凪だから。運命なんて言葉、信じていないけど」

「運命だったんだよ」
 私が言うより先に彼は答えた。

「俺もそんな言葉、信じたことなかった。いろんな偶然が重なって。今もこうして一緒に居ることができるから」
 彼が私の手をギュッと握ってくれた。

「これからは俺がしっかりと働いて、陽菜乃さんのこと安心させたい」

「やだ!」

「えっ?」
 私の嫌だ発言に、彼は困惑をしている。

「凪のご飯、美味しいんだもん。私が一生懸命働くから、凪は今まで通り美味しいご飯作って?」
 なんていう我儘を言っているんだろう。
 けれど、本心だ。

 彼はクスっと笑って
「今はいろんな付き合い方があるから。昔みたいに、男が働いて女の人は家を守るっていう考え方も変わってきているし……。どちらかと言えば、陽菜乃さんが美味しいって言ってくれた顔を見ているのが俺にとっては幸せかな」

「じゃあ、私、一生懸命働くから!将来の子どものためにもっ……!」

 あっ……。
 勢い余ってそんなこと伝えちゃった。
 婚約もしていないのに、子どもの話とか重いよね……?

 しかし凪は何も気にせず
「陽菜乃さんの子どもなんて可愛いんだろうな。ちょっとお転婆でさ。俺もちゃんとしたお父さんになれるように頑張らないと」
 そんなことを言ってくれて嬉しかった。

「凪、大好き」
 寝ている彼に抱きつく。

 ハハっと彼は笑って
「俺も大好きだよ。これからもずっと一緒に居ようね」
 そんな彼の優しい言葉を聞きながら眠りについた。
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