マリオネット
 戻ると席が無くなり立っている私を見て
「藤崎さんも十年くらい前ならこんな風に扱われてたのにな。残念だな。やっぱり、女は愛嬌と容姿と若さだよなぁ」
 課長はにやけている。同じように男性上司たちも笑いながら私を見上げている。
 今の時代に似合わない発言だ。
 録音でもしとけば良かった。

「ちょっと、課長!可哀想ですよ」
 そう言いながら坂本さんも酒井さんも笑っていた。

 これはもう酔っていても立派なセクハラではないか、会社の席だし……。
 そう思いながらも、必死に手を握り自分を抑える。
 私は大人なんだ、我慢しなきゃ。

「そうですね。私も十年くらい前だったら仲間に入れていただけたのかもしれませんね」
 そう笑って答え、空いている隅の席へ座った。
 早く終らないかな、飲み会。



 そんな苦痛の時間も終わりを告げ、最後に課長が酔いながら長い自分の武勇伝を語り、歓迎会という飲み会も終わりを迎えた。
 
 ふぅとため息をつき、退席をする。

「二次会に参加する人は集まってください」
 幹事が声をかけていた。半数ほどの社員が参加するらしい。
 もちろん私は帰宅組だ。
 明日は休日と言っても、これ以上ストレスのかかる環境にいたくない。

「藤崎先輩は帰るんですか?」
 帰宅の準備をしていると坂本さん、隣に来た酒井さんに話しかけられた。

「うん。帰るよ」
 この子たちが、自分の彼氏を私に見せつけたいのは知っていた。

「私たちも帰るんです。二次会とか怠いし……。実は、彼氏が迎えに来てくれるはずなんですけど……。お世話になっている藤崎先輩に紹介したいなって思って……?」
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