マリオネット
「せっかくお気に入りのパンプスだったのに!」
 事情を知らない彼は
「陽菜乃さん。そんなに酔ってないように見えるけど、フラフラしちゃったの?」
 私の消毒をしながら、素直な疑問をぶつけてきた。

 確信が持てなかったがイライラしていた私は、先程の出来事を彼に話した。

「うぇー。女の人って怖いね」

「そうだね。まぁ、いいか。凪のこと自慢出来たし……」

「俺のこと?」
 パンプスは残念だったが、凪が迎えに来てくれたことでイライラも落ち着いた。

「凪はちゃんとご飯食べたの?」

「うん。食べないと怒られるからちゃんと食べたよ」

 よしよしと彼の頭を撫でる。

「私、お風呂入ってくるね。タバコ臭いし……。ちゃんと迎えに来てくれたご褒美、何が良い?」

「えっ。ご褒美くれるの?」
 ご褒美という言葉に彼は食いついてきた。

「うん。あげるよ」
 そろそろ何か欲しい物とかあるよね。
 遠慮しているのか、自分からは何も求めてこないから。

「お風呂入ってくるから、その間に考えておいてね」
 
 私がお風呂から出て来ると、真剣な顔をしている彼がソファーに座っていた。
 もしかして。
 そんなにご褒美について考えているの?

「凪、お風呂入って来て」

 私が声をかけると「はい」と一言だけ返事をし、浴室に向かった。
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