黒百合の女帝
百合side

 「もう20時かあ。どこか寄る?」

カフェから出た後、駅まで戻る道中。

新品の腕時計を確認しながら、そう尋ねる。

するとラクアは首を横に振った。

 「そろそろ帰るか。又は、倉庫に行くという手もあるが」

 「うーん、でもラクア制服だし、このまま帰ろっか。」

麓冬の連中に、学校を特定されたくないし。

という本心は飲み込み、夜道を並んで歩く。

すると一段と騒がしい飲み屋街に入った。

ラクアは既視感がないのか、首を傾げている。

 「ユリ?倉庫には行かないんじゃなかったのか?」

 「気付かなかったの?さっきラクアが逃げた時、ここも通ったんだよ。」

 「そうだったのか。気付かなかった」

ラクアは周囲の看板を眺めながら、そう答える。

すると歩行者と衝突し、彼が後ろに倒れた。

その体を支え、なんとか彼の転倒を阻止する。

次にぶつかった人を一瞥し、顔を顰める。

中年手前程の男は、明らかなチンピラだった。

私たちを舐め回すような視線は品定めだろう。
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