黒百合の女帝
 彼が手駒である事は分かり切っている。

実際、彼は否定する気もなさそうだ。

 「会いたいなら自力で探してください」

 「へえ、強気だね。君のことを調べれば辿り着けるのに。」

頬杖を突き、わざとらしく頰を持ち上げる。

するとその挑発に、またしてもこの男は顔を顰めた。

そのボスとやらは、どうやら人選の能力に欠けるらしい。

僕ならば、こんな奴に七変化 雅との交渉を任せないのに。

 「簡単にいくと思っているんですね。目処も立っていないのに」

 「あるにはある。勿論、言わないけどね。」

 「お言葉ですが、そんなのは無駄ですよ。嶺春でさえ俺たちに気付かないんだから」

つまり、嶺春も知らない族ということか。

まだ情報は引き出せる気がする。

しかし、踏み込みすぎては流石にこの無能も警戒する。

引き際を決めかねていた時、店内に鋭い音が響いた。

どうやら、誰かがカップを割ったようだ。

その騒ぎを皮切りに、彼は黙り込んでしまう。

僕も同様に、ここで引き下がることにした。
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