黒百合の女帝
身辺の流転
 抗争当日、3月3日水曜日。

抗争開始まで、残り十分を切っていた。

しかし、敵の族が来る気配は一切ない。

代わりに、百鬼夜行の鬨の声が響いていた。

肌寒い気候の元、河川敷の橋梁のその下にて。

ここで私たちは抗争を繰り広げる予定だった。

服の埃を払いながら、緩やかな川を眺める。

今着ているのは、桜蘭高校の学ラン。

どうやら、百鬼夜行の特攻服は制服らしく。

私たち麓冬も、百鬼夜行から制服を借りていた。

身形を整えていると、背後から声を掛けられる。

 「女帝さん!久しぶりっすね!ヤユさんの就任式ぶりっすか?」

 「ああ、久しぶり。調子はどう?」

後ろに振り返りつつ、相手の顔を観察する。

彼がカケルだと気付いたのは、およそ二秒後。

正直、見ていなさすぎて覚えていなかった。
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