黒百合の女帝
 ああ、好きなんだなあ。俺。

外からの冷気を浴びながら、ふと気が付く。

もう少し、改まった場で自覚したかったのだが。

なぜ今なのだと思いつつ、握り飯を押し込む。

多分、彼女は俺が考える以上に底が知れない。

それでも、本当にこの人で良かったのだろうか。

とも思うが、もう後戻りは不可能な気がした。

最後の一口を飲み込み、意を決して口を開く。

 「俺とヤナギさんはただの幼馴染って、以前言いましたよね」

 「ああ。私は納得してないけどね。」

頷きながら、俺にお茶を渡してくるユリさん。

それを受け取りつつ、胸中でヤナギさんに謝った。

ユリさんへの信用と、ヤナギさんとの約束。

天秤にかけた結果に、俺は従います。

 「今からするのはここだけの話なんですけど。ヤナギさんは柳組組長の孫、俺は若頭の息子なんです」

俺が幼馴染のヤナギさんに敬語を使う理由。

それがこれだ。つまりは親同士の上下関係。

これはヤナギさんに隠し通すよう言われていた事。

だったのだが、ユリさんの反応は薄かった。

彼女は驚くどころか、優雅に茶を飲んでいる。
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