黒百合の女帝
 「そういえば、カヤは麓冬に残るの?」

気軽に尋ねてみた、という印象な筈なのだが。

カヤは途端に口を閉ざし、歩調も緩めた。

それに合わせつつ、彼の回答を待ち続ける。

彼の開口は、それから三分後のことだった。

 「俺は、残りたいです」

 「そう。ならそうしようか。」

私の簡素な返事に、カヤが突然歩みを止めた。

先程と同様に、私も呼応するように足を止める。

その顔を見ると、拍子抜けという感じだった。

 「馬鹿みたいな顔してるよ。」

 「優しい言葉遣いしましょうよ」

 「これでも十分優しいつもりだよ。で、なにを驚いてるの?」

歩き出しながらも、その反応の意味を訊く。

すると彼は言葉を探しつつ、私に追い付いた。
< 566 / 605 >

この作品をシェア

pagetop