癒やしの小児科医と秘密の契約
「佐々木先生、送ってあげてください。莉々花ちゃんすごく顔色悪かったから、一人で帰るのは危ないと思う」

「心和は大丈夫?」

「私? 全然平気です! 保冷剤で冷やしてるから、痛みもなくなってきました。それに私はまだ仕事も残ってるし。ほら、早く行ってあげてください」

俊介さんの背中を押して、手をヒラヒラと振る。莉々花ちゃんの意識が戻ったとはいえ一瞬でも意識を失ったのだから、送ってもらうのが一番いい。それに俊介さんは莉々花ちゃんの実家を知っているから適任だ。

「わかった。何かあったら連絡して」

「はーい、わかりました」

二人の姿を見送ってから、私は保冷剤をおでこに当てながら椅子にどっかり座った。

ああ、自分の心の狭さにガッカリする。本音は莉々花ちゃんを送ってほしくなかった。でもそれは、考えが子どもっぽい酷い嫉妬だと自覚している。

俊介さんは少し躊躇ってくれた。それだけでもありがたいし、嬉しいって思ったのに。だって今までの俊介さんだったら、優しさに躊躇うことなんてなかったもの。

それって私のことを考えてくれたってことでしょう?
それくらい自信持ってもいいよね?

自信を持ちたいのに、自己肯定感が低くて不安になる。頑張れ私、頑張れ私と自己暗示をかける。

「心和さん、大丈夫ですか?」

「うん、思ったより痛くて涙出てくる」

じわっと滲んだ涙はきっとたんこぶの痛さのせい。
拓海くんが心配そうに、大丈夫かと何度も聞いてくれる。優しさが身にしみる。

「ちょっと休んでなさいよ、あとは私たちがやるから」

「千里さん、すみません」

「仕事終わったらご飯でも行くかー、みんな誘って」

千里さんが明るく笑いながら、おでこに当てていた保冷剤入りタオルを少し目元を隠すように下げてくる。優しさにまたじわっと目元が潤んだ。

「……美味しいお肉食べたいです」

「オッケーオッケー。ガッツリ行こ!」

私のまわりは優しい人が多い。
とても恵まれてる環境に、心があったかくなった。
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