癒やしの小児科医と秘密の契約
2.対症療法
佐々木先生のお家を出てから、ずっとドキドキしている。まさか、こんなことになるなんて思わなかった。

自宅に戻ってシャワーを浴び、身をスッキリさせた。頭からお湯をかぶったことで、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。

……いや、落ち着かないわ。ダメだ、ぜんっぜん落ち着かない。とりあえず考える機能だけは戻ってきた気がする。

『試しに付き合ってみる? 川島さんとお見合いしてもいいかなって思ったんだけど』

これって、これって、佐々木先生と恋人になれたってこと? でもお試しだから、先生に好きになってもらわなくちゃいけないんだよね? どうしよう、期限とかあるのかな?

「はぁー、どうしようー」

佐々木先生を振り向かせてみせると言ったけれど、特にこれといって作戦があるわけじゃない。毎日好きってアピールするくらいしか思いつかない、私のポンコツ単細胞。

「デート……とか?」

誘ったら来てくれるのだろうか?
どうしよう、想像しただけで顔が赤くなる。脳内の佐々木先生がかっこよすぎて鼻血出そう。

その日は頭の中にずっと佐々木先生が居座って、まったく落ち着かなかった。こんな状態で仕事なんかできるのかと不安になったけれど、否応なく時間は過ぎていくわけで……。

翌日、更衣室を出たところでさっそく佐々木先生とバッタリ出くわした。同じ小児科だから顔を合わせるのは当たり前だけど、それにしても出会うのが早すぎる。

「おはよう、川島さん」

「お、おはようございます」

至っていつも通りの佐々木先生は、今日も朝から爽やかオーラを纏ってキラキラしている。ドキドキしているのは私だけみたいだ。

白衣がよく似合って、かっこいい。背も高いし、柔らかそうな髪もほどよく短く、さらっと揺れる。清潔感あふれる佇まい。ああ、ずっと見ていたい。好きって言いたい。好きって言ったら何て答えてくれるんだろう。

などと妄想していると、ふと佐々木先生がこちらを見る。
< 15 / 120 >

この作品をシェア

pagetop