冷たい瞳の彼と、約束された未来
第三章 すれ違う心
週末の午後、私は従兄の真司に誘われ、銀座のレストランで昼食をとっていた。
真司は父の妹の息子で、昔から兄のように私を気にかけてくれる存在だ。
柔らかな物腰と冗談交じりの会話は、張り詰めていた心を少しずつ解きほぐしてくれる。
「この前のパーティー、あいつ相変わらず冷たかったな。おまえ、平気なのか?」
真司がワイングラスを軽く揺らしながら言う。
「……平気じゃないけど、慣れちゃった」
笑ってみせたけれど、自分でもその笑みが薄く色褪せているのがわかった。
食事の後、店を出ると外は夕暮れに染まりつつあった。真司が送ると言ってくれたので、彼の車に乗り込む。
たまたま信号待ちで停車したとき――。
「……彩花」
車の外から低い声が響いた。
振り向けば、そこには見慣れた長身の影。黒のコートを羽織り、冷たい瞳でこちらを見下ろす悠真だった。
「悠真……」
名前を呼んだ瞬間、その手が開いたドアを押さえ、私を外へ引き出す。
「何してる」
吐き捨てるような声音。
「た、ただ食事を――」
「俺に黙って、他の男と?」
「真司は従兄よ。あなたも知ってるでしょ」
「血が繋がっていようが関係ない」
鋭い言葉が、胸の奥を容赦なく刺す。
「……どうしてそんな言い方をするの? 私のこと、信じられないの?」
一瞬、悠真の瞳に揺らぎが走った気がした。けれど彼は答えず、背を向けて歩き出す。
追いかける勇気が出せず、私はただその背中を見送るしかなかった。
――どうして、こんなに遠いの。
幼い頃は、すぐそばで微笑んでくれたのに。
真司は父の妹の息子で、昔から兄のように私を気にかけてくれる存在だ。
柔らかな物腰と冗談交じりの会話は、張り詰めていた心を少しずつ解きほぐしてくれる。
「この前のパーティー、あいつ相変わらず冷たかったな。おまえ、平気なのか?」
真司がワイングラスを軽く揺らしながら言う。
「……平気じゃないけど、慣れちゃった」
笑ってみせたけれど、自分でもその笑みが薄く色褪せているのがわかった。
食事の後、店を出ると外は夕暮れに染まりつつあった。真司が送ると言ってくれたので、彼の車に乗り込む。
たまたま信号待ちで停車したとき――。
「……彩花」
車の外から低い声が響いた。
振り向けば、そこには見慣れた長身の影。黒のコートを羽織り、冷たい瞳でこちらを見下ろす悠真だった。
「悠真……」
名前を呼んだ瞬間、その手が開いたドアを押さえ、私を外へ引き出す。
「何してる」
吐き捨てるような声音。
「た、ただ食事を――」
「俺に黙って、他の男と?」
「真司は従兄よ。あなたも知ってるでしょ」
「血が繋がっていようが関係ない」
鋭い言葉が、胸の奥を容赦なく刺す。
「……どうしてそんな言い方をするの? 私のこと、信じられないの?」
一瞬、悠真の瞳に揺らぎが走った気がした。けれど彼は答えず、背を向けて歩き出す。
追いかける勇気が出せず、私はただその背中を見送るしかなかった。
――どうして、こんなに遠いの。
幼い頃は、すぐそばで微笑んでくれたのに。