桃ちゃんセンセと田宮くん
【桃side】1
「桃ちゃんセンセ?」
言葉と共に頭にフワリと置かれた手。私は驚いて顔を上げた。
私がいるのはリクルートに来た大学の構内だ。就活フェアに参加する企業に用意されていたオープンスペースで、ノートパソコンを開いて急ぎの連絡をしていた私に声をかけてきたのは。
「やっぱり桃ちゃんセンセだ」
ニコリと笑う男の子――子、と言っていいのか分からないけれど――を見た私は、突然人の頭を掴んだ無礼な行いも忘れて呆然と呟いた。
「え? 田宮……くん?」
「よかった。覚えてくれていて」
田宮くん――田宮碧は、嬉しそうにもう一度笑ったのだ。
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