桃ちゃんセンセと田宮くん
【桃side】3
その日は、寒の戻りで寒かったのを覚えている。私は同じアルバイト仲間と校舎を出て、確か、飲みに行こうとしていたところだった。
「あれ、田宮くん、どうしたの?」
彼がいたのは校舎の前だから先に出ていた同僚が既に声をかけていた。
私は同僚の後ろから覗き込むように前を見ると、そこには田宮くんが静かに佇んでいた。
元々年齢に似合わない落ち着いた雰囲気を持っていたけれど、第一希望の難関国立大学に受かったばかりなのだ。浮かれて羽目を外してもいいのに、田宮くんには全くそういう雰囲気はなかった。
どこか超然としている田宮くんに、私も周りのアルバイト仲間も、高校生なんだから早く帰りなさい、というのも忘れて見惚れていた。そう、あの時、その場にいたみんな、田宮くんから目が離せなかったのだ。
「桃ちゃんセンセ、今いい?」
突然田宮くんに声をかけられた私は、自分に呼び掛けられているのにすぐに反応出来なかった。
「桃ちゃんセンセ?」
「はい!」
2回目の声かけで弾かれたように答えた私に、田宮くんは変わらない表情のまま、話があると告げた。