甘やかな契約婚 〜大富豪の旦那様はみりん屋の娘を溺愛する〜
私は唇を噛みしめた。
彼の提案を受けることが、【みやび】を守る唯一の道だと、本能で分かってしまったから。
でも、心のどこかで叫ぶ声がある。
「こんな形で守るなんて、本当に正しいの?」
蔵の空気は冷たく、静かだった。木樽から漂う味醂の甘い香りが、私を慰めるようだった。
だが、その香りさえ、今は遠く感じられた。
周寧は黙って私の答えを待っていた。
その瞳は、まるで私の心を丸裸にするかのように、じっと私を見つめている。
「私は……」
言葉を紡ごうとした瞬間、喉が詰まった。
【みやび】を守るためなら、どんな犠牲も払う覚悟はできていたはずだ。
なのに、なぜ、こんなにも心が揺れるのか。
彼の提案は、救いか、それとも新たな牢獄か。
揺れる心の中で、答えはまだ出せなかった。