あなたは私のオランジェットの片割れ
――それは、杏と同級生だった高校の頃のこと。
杏の作るお菓子を初めて食べたのは、斗馬と杏が別のクラスだった一年生の頃。二月のバレンタインデーに、友達伝にチョコレートのお菓子が回ってきたのだ。
それは、輪切りにしたオレンジを甘く煮て乾燥させ、それに半分チョコレートが付けてあるもの。
友達の彼女の友達が作ったものらしい。まず、手作りでこんな、売ってるお菓子みたいに作れるのかと驚いた。そして、食べたらその美味しさにまた驚いた。爽やかな甘味の中に少しの苦みと、チョコレートの甘さ。
斗馬は高校の時も、整ったビジュアルと優しい性格で女子に人気があった。だから、バレンタインデーには女子からチョコレートを毎年たくさん貰っていたが、そのオレンジのチョコレートは他のどのチョコレート菓子よりも美味しいと思った。
残念だったのは、それが本命チョコじゃなくて、余ったついでに回ってきたばら撒きチョコだったこと。
友達に聞いて、それがどの女子が作ったのか教えてもらった。隣のクラスの子だった。『葛原杏』という名前で、バレンタインデー以外でも、よくお菓子を作ってくるらしい。
遠くから見ただけだが、自分の周りに集まって来る女子たちとは違う、大人しくて静かな印象。
なんとなく、声は掛けなかった。
二年生のバレンタインデーにも、そのオレンジのチョコが回ってきた。どうやらバレンタインのチョコレートは、そのオレンジのが彼女の定番らしいと分かった。
二年生の時もクラスは別だったから、やはり声は掛けなかった。
三年になりクラスが一緒になった時、友達の友達ということで話すようになり、そのお菓子が『オランジェット』といものだと知った。
そして斗馬は、彼女にいつの間にか恋をしていたことに気がついた――。
杏が駅のホームへ続く階段を昇って行くのを見届けると、斗馬は桐生の待っているカフェに向かって歩き出した。
高校の時に片想いのまま眠らせてしまった恋が、胸の中で目を覚ましたのを感じながら。
◇◇◇
杏の作るお菓子を初めて食べたのは、斗馬と杏が別のクラスだった一年生の頃。二月のバレンタインデーに、友達伝にチョコレートのお菓子が回ってきたのだ。
それは、輪切りにしたオレンジを甘く煮て乾燥させ、それに半分チョコレートが付けてあるもの。
友達の彼女の友達が作ったものらしい。まず、手作りでこんな、売ってるお菓子みたいに作れるのかと驚いた。そして、食べたらその美味しさにまた驚いた。爽やかな甘味の中に少しの苦みと、チョコレートの甘さ。
斗馬は高校の時も、整ったビジュアルと優しい性格で女子に人気があった。だから、バレンタインデーには女子からチョコレートを毎年たくさん貰っていたが、そのオレンジのチョコレートは他のどのチョコレート菓子よりも美味しいと思った。
残念だったのは、それが本命チョコじゃなくて、余ったついでに回ってきたばら撒きチョコだったこと。
友達に聞いて、それがどの女子が作ったのか教えてもらった。隣のクラスの子だった。『葛原杏』という名前で、バレンタインデー以外でも、よくお菓子を作ってくるらしい。
遠くから見ただけだが、自分の周りに集まって来る女子たちとは違う、大人しくて静かな印象。
なんとなく、声は掛けなかった。
二年生のバレンタインデーにも、そのオレンジのチョコが回ってきた。どうやらバレンタインのチョコレートは、そのオレンジのが彼女の定番らしいと分かった。
二年生の時もクラスは別だったから、やはり声は掛けなかった。
三年になりクラスが一緒になった時、友達の友達ということで話すようになり、そのお菓子が『オランジェット』といものだと知った。
そして斗馬は、彼女にいつの間にか恋をしていたことに気がついた――。
杏が駅のホームへ続く階段を昇って行くのを見届けると、斗馬は桐生の待っているカフェに向かって歩き出した。
高校の時に片想いのまま眠らせてしまった恋が、胸の中で目を覚ましたのを感じながら。
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