あなたは私のオランジェットの片割れ

「……これ、食べられる? つまみ食いしてもいい?」

「まだオランジェットではありませんが、オレンジですから食べられますよ。蒼士さんのために作っていたので、つまみ食い、いいですよ」

 杏が許可すると蒼士はオレンジをつまみ、パクリとひと口で食べた。

「あまっ! うまっ!」

 パッと広がった、オレンジのような笑顔。本当に美味しそうに食べる。俳優という職業柄、表情が豊かなのかもしれないが。

 でも自分が作ったものをそうやって食べてもるえるのは凄く嬉しい。

 思わず杏も、笑顔になった。

 蒼士はタッパーをまた冷蔵庫にしまうと、杏のいるベッドへ戻った。そしてまた、ベッドへ腰掛ける。

「次のお菓子レッスンの予定が決まったら、また作ってくれるか?」

「もちろんです! 今度はちゃんと、オランジェットにします」

「楽しみだ」

 杏が体調を崩してしまったので、次のお菓子レッスンの日にちは決まっていなかった。元気になったら、また桐生と予定をすり合わせる事になっている。

「熱は? 大丈夫?」

 蒼士は杏のおでこに手を伸ばす。サラリと前髪をかき上げると、おでことおでこをコツンと合わせた。

「……まだ、熱いな」

 冷静にそんな事を言われたが、杏の心の中はそれどころじゃなかった。

(顔! 顔が近いい!!)

 睫毛の一本いっぽんまで確認出来てしまうくらい。慌てて顔を引こうとすると、後頭部に手をあてられた。これじゃあ、離れられない。
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