『その秀女、道を極まれり ~冷徹な親衛隊長様なんてこうして、こうよっ!!~』
しかし、琳華の目に映る女性はとても可憐な姿をしており、着飾らせた梢と並ばせたら可愛いのだろうな、と思わせる。
シックに一つに結い上げて髪飾りも大ぶりな物を一つだけ付けている琳華とは違い、長い髪を左右一つずつお団子状にして小さな髪飾りを複数付けた丹辰はその髪飾りのようにきらきらとした視線を琳華に向けている。
「昨夜の事をお詫びしようと」
「いえ、そんな……わたくしの方こそ不躾なことをしてしまったと琳華様に謝りたくて」
「ごめんなさいね。少し、外の空気を吸いたくて」
ふふ、と儚げな表情に変わる琳華は背後に控えてくれていた梢に「例の物を」と持たせていた布包みを開かせて、中から一つの紙包みを取り出す。手の平ほどしかない物だったが中身は糖蜜漬けの果物が数個、入っている。
「干し杏の糖蜜漬けなのだけれど」
お口に合うかしら、と控え目に言う琳華の名演技に梢は若干、笑いそうになっていた。誰が作ったとは絶対に言わない主人。ましてや自分たちが庭で遊びがてらあらゆる木の実を炒ったり、乾燥させた果物を大量に煮詰めた糖蜜に漬けて作った物の内の一つだなんて……丹辰はどうやらそれが既製品だと思っているらしい。可憐な指先で包み紙をそっと開き、喜んでくれている。
「では、また後で」
「琳華様、お部屋にお戻りになってしまうのですか?」
「え……ええ」
梢と作戦会議をしようとしていただけである。
「琳華様のお話もお伺いしたかったのですが」
「わたくしの……?」
「はい。昨夜は皇子様にお声をかけていただけるよう、皆で自身を磨こうと言う話をしていたのです」
丹辰が言っていることは何もおかしくない。
しかし琳華の瞳は、野山を駆け回り兄たちと武術を学んだ鋭い感覚は、丹辰の目に獰猛さを見てしまった。
「そう、ですね……わたくしは皆様よりも年上で、あまりそう言ったことは参考になるかどうか。確かに、皇子様のご寵愛は賜りたいのですが」
あくまでも控え目に、自分の最年長と言う年齢を引き合いに出して話に角が立たないようにする琳華は丹辰の視線から外れるように少しだけ顔を伏せる。
(最年長の年増、と言うのは事実なのだからそれを大いに活用してしまえばいいのよね)
またしても琳華は袖口の中で強く、決意の握りこぶしを作る。これは未だ見ぬ、と言うか今から親衛隊の中に変装をして紛れ込む宗駿皇子を守るためだ。
周家の一員として、そしてあわよくば警備の女官、宮正になるための布石なら……耐えられる。