『その秀女、道を極まれり ~冷徹な親衛隊長様なんてこうして、こうよっ!!~』
お昼のお茶の時間が始まる前まで、広間では着飾った秀女たちが、そしてその部屋の端には彼女たちに付き添う侍女たちが後宮内の仕来たりを学ぶ。
担当の女官は比較的穏やかな口調で講義をしており、琳華も真面目に聞いていると言うか今回の役割の為に目立たぬように動くには、と一言一句を逃さぬよう熱心に聞いていた。
それがまた、女官や下女たちの間に良い意味での誤解を生んでいるなど本人は知らない。
その仕来たりや作法などの座学を終えた小休止。次の時刻を知らせる鐘が鳴るまで各自昼のお茶をするなり、自由に過ごしても良いとのことだったが大半の秀女たちは広間に残っていた。
「あの、伯丹辰様」
琳華もまた居残っていた内の一人。そして既にちょっとした集いを作っていた中心人物に話し掛ける。
昨日、いきなり格上の琳華を部屋に招こうとした伯家の娘、丹辰。何だかんだで周家が秀女たちの中で一番、格が上だった。
父親は宮殿に勤める上級官僚。しかも裏では相当何かやらかしているような男の娘。おまけに母親も元、官位を得ていた女官。
父親の名の方が知れ渡っているせいで奇跡的に琳華の普段の少々お転婆な姿は誰にも知られていなかった。
今も物腰は柔らかに、にこやかに。作り笑顔は母親のよそ行きのソレを見てきていた。こんな所で役に立つ、と言うかきっとこんな所仕込みの笑顔である。
「まあ、周琳華様!!」
四人の秀女の中心にいた丹辰がずい、と話し掛けて来た琳華の前に出る。薄桃色の控え目な羽織を着ている琳華とは相反するように、丹辰の羽織は若さを象徴するような華やかな若草色に黄色の花々が襟元や袖に刺繍されていた。ひと目見るだけで高価な物だと分かるが多少の賄賂でも握らせておけば持ち込むのは容易い。
それを父親を通して知っている琳華だからこそ、少し警戒をする。自分以外にも多少、融通を利かせることが出来る者がいるのだ。