『その秀女、道を極まれり ~冷徹な親衛隊長様なんてこうして、こうよっ!!~』
朱王朝の首都『朱慶』の中心部、宮殿の奥にある後宮へと通ずる大門――その手前に集まっていたのは秀女の一行。
持ち込みが一人一つだけ許されているつづらの荷物はあらかじめ先に運び込まれており、手回りの荷物を抱えた梢を従えた琳華も入宮する秀女たちの行列の中腹に加わっていた。
そして秀女とその侍女たちはぞろぞろと大門を抜けると担当の女官によってこれから頻繁に使うことになると言う寄宿楼の二階、講義などを行う広間へと通される。
その広間ではこれから部屋割りが言い渡されるが……琳華と梢はもうそれを大まかに知っていた。もちろん、父親からの事前通達だ。他の上級貴族の家も賄賂を出して部屋割りに便宜を謀って貰っているそうだがそこは顔の広い琳華の父。
なんだかんだともっともらしい理由を付けて琳華と梢の二人は他の秀女との相部屋ではなく角部屋に逗留する事に成功していた。
「ってここ、明らかに布団部屋か何かだと思うのだけど……」
「他の秀女の方も位の高いお家柄の方には一部屋が……うーん……えーっと……その中でもお嬢様のお役目にとって都合がよく、出入りのしやすいお上品なお部屋が」
「物は言いよう、ね」
あわあわと良い言葉を探す梢に琳華も仕方なさそうに笑う。
宿泊楼の一階、周琳華に宛がわれたのは本当に元、布団部屋だった。今回の秀女選抜で上手いこと布団が全部出払っていて空き部屋となっていたのだ。
「でもここ、うちの小梢の部屋より狭くない?」
周家の屋敷では部屋が余っていたので梢にも使用人に宛がうにはかなり広い部屋を与えていた。他の住み込みの下男なども離れの納屋に、とは言え清潔で使い勝手の良い部屋だったりとどこの家よりも高待遇であった。
何より梢は来た当時はまだ幼い少女であり、境遇も踏まえてのことだったのだがこの布団部屋、本当に狭い。
「角部屋ですよ?」
「そうね、うん……まあ、確かに」
梢に諭されてうむむ、と口を噤む琳華だったが指定の上下白い衣裳に着替えたらすぐに梢を部屋に置いて先ほどの二階部分にある広間に集まらなくてはならない。
その間に侍女は荷解きを、とのことだが貴族や豪商の娘以外は侍女を持っていない。一人までなら連れて来ても良いと言うことで琳華も梢を連れて来たのだが顔ぶれからしてやはり、中流以上の自分と同格の娘たちくらいしか侍女は連れていなかった。
代わりに後宮の下女が面倒を見てくれるそうなのだが普通の家庭から選抜された秀女は自分などよりうんと大変なのだと琳華は知る。けれど今回ばかりはあまりそちらには構っていられない。