100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月1日、月曜日

「柊莉子、100日後に告白するから、よろしく」



「……は?」

 夏休み明けの教室。

 始業式とホームルームが終わって、担任の先生は「さっさと帰れよ」なんて言って出ていった。

 私は友だちと、昼ごはんをメックにするかソイゼにするか相談してた。

 そんなときに、わけわかんないこと言ってきたのが……同じクラスの一ノ瀬楓。
 クラスの人気者で、顔面偏差値高めのサッカー部のエース。


 いや、意味わかんない。


「そういう冗談苦手だから、他あたってもらって……」


「冗談じゃねえよ。100日かけて、柊には俺のこと好きになってもらうから」


 一ノ瀬がスマホをいじった。

 スマホが震えて、一ノ瀬の名前が表示された。


『カウントダウン開始。あと、99日』



「あ、今日も数えてるんだね」


「うん。よろしく」


「よ、よろしくないけど!?」


「俺のこと、好きになれよ」


 私の話なんかなんにも聞かないで、一ノ瀬は一歩近づく。


 逃げる間もなく私の手を取って、甲にキスした。



「んあ……っ!?」


 ○ィズニーの王子様かな……?
 そう突っ込む前に、一ノ瀬は「じゃ、また明日」と手を離して、教室を出ていった。


 隣にいた結を見ると、ポカンと口を開けている。


「ね、結。なに、あれ?」


「私に聞かないでよ……」


 ほんとにその通りなんだけど、誰かに答えを教えてほしかった。
< 1 / 96 >

この作品をシェア

pagetop