100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月2日、火曜日

「柊、おはよっ」


 朝、昇降口で靴を履き替えてたら、一ノ瀬に声をかけられた。
 顔を上げると、やたらと嬉しそうな顔が私を見ている。


「……はよ……」


「あれ、テンション低い?」


「いや、まだ意味わかんないし」


「なにが? あ、あと98日ね」


「マジでやるの、それ……」


「どれ?」


「カウントダウン」


 歩き出すと、一ノ瀬は当たり前みたいに横に並んできた。

 いや、クラス一緒だから当たり前なんだけどさ。


「止めない。言っただろ、100日かけて俺のこと好きになってもらうって」


「言ったけどさあ」


 なんで私なのか、とか。

 一ノ瀬はめちゃくちゃモテるから、やっかみとか面倒そうだし、とか。

言いたいことは山ほどある。


 でも言葉を選んでるうちに教室に着いちゃって、一ノ瀬は何でもない顔で友達のところに行っちゃった。



 やっぱ、からかわれてるだけだよね。


 ため息をついて、自分の席に向かう。
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