100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月12日、金曜日

 放課後、校庭の隅で苗を抜いてたら、足音とガラガラって音がした。

 振り返ると園芸部の男の先輩が台車を押してやってきた。


「柊ー、追肥持ってきたから混ぜといて。ゴミ袋の追加も置いとくよ」


「ありがとうございます!」


「苗は再来週の月曜日に届くらしいから、急がなくてもいいけど、それまでに全部の花壇の掃除と肥料混ぜといてよ」


「がんばります!」


 先輩を見送ってから、ゴミ袋広げて花壇の前にしゃがむ。

 今度はバタバタと騒がしい足音がした。

 ……顔を上げなくても誰かわかるから、無視してゴミ袋に草を入れていく。


「柊! い、今の、誰!?」


 息を切らす一ノ瀬は、珍しく余裕のない顔をしている。


「部活の先輩」


「彼氏とかだったりする?」


「部活の先輩って言ったじゃん! 追肥とゴミ袋持ってきてくれただけだよ」


「そっか……。あと88日なんだけど、一緒に帰っていい?」


「カウントダウンと一緒に帰るのって、関係なくない?」


「関係ある。どっちも柊が好きだからしたいんだ」


 一ノ瀬は私の隣にしゃがんだ。


「……私、あと二時間くらいかかるよ」


「俺もそれくらい。校門のとこで待ってて」


 ニヤッと笑って、一ノ瀬は立ち上がった。

 いつの間にか余裕の顔に戻ってて、ほんと意味わかんない。
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