100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月13日、土曜日

 学校が休みの朝、水やりしに学校に行ったら、園芸部用の倉庫の前で体操着の一ノ瀬が待ち構えてた。


「いや、なんでいるの」


「おはよ、柊。園芸部の先輩が教えてくれた」


「あっそう……」


 倉庫からホースを出して運ぶ。

 一ノ瀬はなぜかついてくる。


「いや、一ノ瀬、部活は?」


「あと15分休憩だから」


「休憩しなよ」


「柊の顔を見てるのが一番元気出るんだよ」


「意味わかんない」


「あと87日だけど、本当にわかんない?」


 笑顔の一ノ瀬が私の顔を覗きこむ。

 わかんないし、わかりたくもない。

 だって……理由が、わかんないんだもん。



 低木に水をまいていると、一ノ瀬は近くに立っているだけで、何も話しかけてこない。

 黙って私を見ている。


「颯ー、どこー? そろそろ練習再開するよー」


 遠くからメイサちゃんの声が聞こえた。

 一ノ瀬はパッと振り返る。


「あ、やべ、そろそろ行かなきゃ。またね、柊。月曜日に」


「はいはい。さっさと行きなよ」


 メイサちゃんのとこに行けって言うのは、怒られそうだからやめといた。

 走り去る背中見てたら、振り向いて手を振ってきたから、ちょっとだけ振り返した。


 ……そんなに、嬉しそうにしないでほしい。
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