100日後、クラスの王子に告白されるらしい

9月20日、土曜日

 昨日からの雨はまだ降り続いていて、部活も休みになった。

 私は、洗い終わったタオルを前にして困っていた。


「普通に返せばいいんだよね……?」


 これは、昨日一ノ瀬が貸してくれたタオルだ。

 何かお礼をつけたほうがいいのかなあ。

 でも、私、一ノ瀬が喜ぶものなんて知らない。


 何も思いつかなくて唸っていたら、スマホが震えた。

 一ノ瀬の名前が表示されている。


『あと80日。少しは俺のこと好きになった?』


「なってない。一ノ瀬ってさ、好きなお菓子ある?」


 そう送ったら、一瞬で既読がついて、電話がかかってきた。


「どしたの」


『俺の台詞だけど!? なに、あれ』


「いや、昨日タオル借りたから、返すときにお礼つけたほうがいいかなーって」


『じゃあ、一緒に帰るときに手えつないでほしい』


「お菓子って言ってるじゃん」


『あわよくば、別れるときにキスしてほしい』


「だーかーらー」


『えー……』


 電話の向こうから、不満そうな声が聞こえる。

 めんどくさいなあ、もう。


『俺的にはもうあげちゃってもいいんだけどさ。……あ、じゃあ学校近くのコンビニで、柊が最近気に入ってるやつがいい。柊の好きなもの、教えて』


「まあ、いいけど……。じゃあ月曜日に持って行くよ」


『楽しみにしてる』


 嬉しそうな声を聞いて、どうしたらいいのか、やっぱりわからなかった。
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