100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月01日、水曜日

「あと、69日だからな!」

「はいはい」


 一ノ瀬が元気に手を振るのを見送って、私も部活に向かった。
 月曜日に植えた苗が根を張ったか確認したい。


「……あの、ちょっと」

「ん?」


 振り向いたら、女の子が3人、寄り添って私を見ていた。襟に1年生カラーの校章を着けている。


「……なに?」

「あの、一ノ瀬先輩のこと、好きなんですか?」


 出た。
 よく見たら、この子たちサッカー部のマネージャーだ。


「好きじゃない」

「じゃあ、離れてください。先輩が気を持たせるみたいなことするから、一ノ瀬先輩が困ってるんじゃないですか」

「……ウザ」

「な、なんですか、それ!? この子、文化祭を一ノ瀬先輩と周りたいのに柊先輩と周るからって断られて、かわいそうだと思わないんですか!?」

「思わない。一ノ瀬が誰と周るかは、一ノ瀬が決めることだよ」


 1年生たちは私を睨みながら、「冷たい」「ひどい」「意地悪」なんて言っている。
 そうだよ。冷たくて意地悪な女だから、一ノ瀬にかわいいって言われる理由なんてない。
 くるっと向きを変えて歩き出した。


「逃げるんですか!?」


 って声が聞こえたけど、無視して歩いた。
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