100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月03日、金曜日

「あと67日! まずは3組にアイスを買いに行こう」


 頭にお化けのお面をつけた一ノ瀬が、ニコニコして宣言した。
 文化祭初日は学内発表。
 生徒だけで見て回る。


「いきなり?」

「去年さ、アイス人気すぎて混んでたからさ、先に買って、食いながら周ろう。んで、食い終わったらカレー買って戻ってこようよ」

「わかった」

「あとさ……その、混んでるから、逸れないように……手、掴まってていい?」


 手、つなぐんじゃなくて、掴まるんだ。
 なんか面白くて、つい頷いちゃった。


「やった」


 一ノ瀬はでれっと顔を緩めて、私の手を握った。
 3組はもう結構混んでたけど、まだアイスは残ってる。


「あ、颯来た! 柊ちゃんも!」


 アイスを渡してくれたのはメイサちゃん。……話すのは初めてだ。


「ども……」

「あのね、颯、柊ちゃんと文化祭周るの、す〜〜っごい楽しみにしてたよ。……私は西先輩にフラレたのに……」

「うるせえな。いいからスプーンも寄越せ。いこ、柊。全部クラス周んないと」

「はいはい、いってらー」


 ニコニコ手を振るメイサちゃんにペコッと頭を下げて、一ノ瀬について行った。
 ……そっか、そんなに楽しみにしてたんだ。


「ねえ」

「なに?」

「最初、どこ行くの?」

「まずは3年のお化け屋敷! 柊のお面があれば、お客を全部奪える」

「それは無理じゃないかな……」


 つないだ手が熱い。
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