100日後、クラスの王子に告白されるらしい

10月09日、木曜日

 体育の授業は相変わらず、男女共にバスケだ。
 一ノ瀬は相変わらず、キャーキャー言われている。


「莉子ち、キャーキャー言いに行かなくていいの?」


 結が私を覗き込む。


「あれに混ざりたくない」

「一ノ瀬、喜ぶと思うけど」

「そうかもしれないけどさ」

「あ、ついに自覚した?」

「なんのよ……」


 すぐに私と結の番がきて、あっさり負けておしまい。
 体育の先生が「もう少し頑張れ」とかなんとか言っている。


「柊ー、おつかれ! あと61日!」


 体育館の向こう側で一ノ瀬が手を振っている。
 うちのクラスの女子は慣れてきて、「一ノ瀬は一途だねー」って笑ってるけど、隣のクラスの女子は「え、なにあれ」「一ノ瀬くん、彼女いたんだ?」「めっちゃ地味じゃん」「もうちょいマシな子選べるでしょ」……なんて、言いたい放題だ。


「莉子ち?」

「んー……」

「大丈夫?」

「うーん。ムカつく」

 知ってるよ。私が地味なのも、一ノ瀬ならもうちょいマシな子を選べるのも。
 でもさ、それは私じゃなくて一ノ瀬に言え!!


「一ノ瀬ー!」

「なにー?」

「次、勝って!」

「わかった! 絶対に勝つ!!」


 陰口を叩いていた女の子たちが黙った。
 これくらいで黙るなら、余計なこと言わなきゃいいのに。
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